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2020年5月 7日 (木)

落語の落(さげ)

今日もまだ在宅が続きます。

久しぶりに"積ん読蔵書"を引っ張り出しました。

東洋文庫の「新編 落語の落(さげ)1・2」。

版は小さいですが、箱入りで布張りのハードカバーで、それぞれ税別で2400円也。

1997年の刊行ですから、半世紀近く前の本。

・・・読んでみようかな。

落(さげ)は落語のいのち。

明治・大正期の文人,海賀変哲が実際に見て,聴いて,集めた三百数十種の「落」にあらすじを付して落語の真髄にせまる。

第1巻には,大正7年の単行本「落語の落」全編を収める。

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こんな書評がありました。

実際に見て聞いた、300以上の落語の「落(さげ)」を集めた、笑いのいいとこ取り。

このところ、“花見”がどうのとかしましくあったが、私が花見と聞いて思い出すのは、落語の「あたま山の花見」(上方では「さくらんぼ」ともいうらしい)である。

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アニメーション作家の山村浩二の作品が、何年か前に話題になったこともあり、知っている人も多いかもしれない。

さすがに一席ぶつわけにもいかないので、東洋文庫の『新編落語の落1』から。

〈吝兵衛(けちべえ)という男が、或る時花見に出かけたが、名の如き吝な男だから、落ちて居た桜実(さくらんぼ)を食ったばかりで何も食わず飲まずで帰って来たが、その桜実に土が付いて居たので、頭から芽をふき始めた〉。

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手ぶらで花見に行くなんて無粋なことをするから、頭から桜の芽が出た、というんですな。

これはもうSFの世界である。

で、この桜が〈周囲七八尺〉にも育ってしまう。

それが見事だと見物人が集まるわ、頭上に茶屋が出るわの大騒ぎ。うるさくてたまらんと桜を引っこ抜く。

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〈そのあとへ大きな穴があいたが、或る日外へ出ると大夕立に逢って、頭の凹(くぼみ)の処へ一杯水がたまった。

吝兵衛はヒヤリヒヤリしていゝ心持なので、水をあけずに置くと、いろいろと魚が湧き出した〉

桜から池へ。見事な飛躍である。

すると釣り師は来るわ、芸者を連れて船を出す者まで現れて、花見のうるささどころの騒ぎじゃない。

何がおかしいって、この吝兵衛の場当たり的な行動ほど、笑えるものはない。

自分を棚に上げて、「桜が悪い」「池が悪い」と対象を責め立て、根本的な解決をしようとしないから、どんどん事が悪くなっていく。

とはいっても、その根本原因は、吝兵衛のスタイルそのものにあるのだから、悪い方向へ一度歯車が動き出したら、もう止めようがない。

だからといって、吝兵衛を責めたらそれで済むか、といったら決してそうじゃない。

おそらく吝兵衛によって周囲も迷惑を被っているだろうが、吝兵衛というスケープゴートを立てたって、何も解決には至らないだろう。

じゃあどうするか。

それはこの本の中に答えがあった。

「馬鹿馬鹿しい」と笑い飛ばすのである。

「馬鹿だなぁ」と事態を笑いに転換するのだ。

「笑い」こそ、何者にも勝る武器はないなあと、このところ思いを強くするのである。

・・・「あたま山」という噺は、私が落研に入部して初めて演った想い出(トラウマ)の噺です。

先輩から、「馬鹿馬鹿しいけど、馬鹿馬鹿しいと思って演ったらいけない」と言われたのを思い出します。

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