落語の落(さげ)
今日もまだ在宅が続きます。
久しぶりに"積ん読蔵書"を引っ張り出しました。
東洋文庫の「新編 落語の落(さげ)1・2」。
版は小さいですが、箱入りで布張りのハードカバーで、それぞれ税別で2400円也。
1997年の刊行ですから、半世紀近く前の本。
・・・読んでみようかな。
落(さげ)は落語のいのち。
明治・大正期の文人,海賀変哲が実際に見て,聴いて,集めた三百数十種の「落」にあらすじを付して落語の真髄にせまる。
第1巻には,大正7年の単行本「落語の落」全編を収める。
こんな書評がありました。
実際に見て聞いた、300以上の落語の「落(さげ)」を集めた、笑いのいいとこ取り。
このところ、“花見”がどうのとかしましくあったが、私が花見と聞いて思い出すのは、落語の「あたま山の花見」(上方では「さくらんぼ」ともいうらしい)である。
アニメーション作家の山村浩二の作品が、何年か前に話題になったこともあり、知っている人も多いかもしれない。
さすがに一席ぶつわけにもいかないので、東洋文庫の『新編落語の落1』から。
〈吝兵衛(けちべえ)という男が、或る時花見に出かけたが、名の如き吝な男だから、落ちて居た桜実(さくらんぼ)を食ったばかりで何も食わず飲まずで帰って来たが、その桜実に土が付いて居たので、頭から芽をふき始めた〉。
手ぶらで花見に行くなんて無粋なことをするから、頭から桜の芽が出た、というんですな。
これはもうSFの世界である。
で、この桜が〈周囲七八尺〉にも育ってしまう。
それが見事だと見物人が集まるわ、頭上に茶屋が出るわの大騒ぎ。うるさくてたまらんと桜を引っこ抜く。
〈そのあとへ大きな穴があいたが、或る日外へ出ると大夕立に逢って、頭の凹(くぼみ)の処へ一杯水がたまった。
吝兵衛はヒヤリヒヤリしていゝ心持なので、水をあけずに置くと、いろいろと魚が湧き出した〉
桜から池へ。見事な飛躍である。
すると釣り師は来るわ、芸者を連れて船を出す者まで現れて、花見のうるささどころの騒ぎじゃない。
何がおかしいって、この吝兵衛の場当たり的な行動ほど、笑えるものはない。
自分を棚に上げて、「桜が悪い」「池が悪い」と対象を責め立て、根本的な解決をしようとしないから、どんどん事が悪くなっていく。
とはいっても、その根本原因は、吝兵衛のスタイルそのものにあるのだから、悪い方向へ一度歯車が動き出したら、もう止めようがない。
だからといって、吝兵衛を責めたらそれで済むか、といったら決してそうじゃない。
おそらく吝兵衛によって周囲も迷惑を被っているだろうが、吝兵衛というスケープゴートを立てたって、何も解決には至らないだろう。
じゃあどうするか。
それはこの本の中に答えがあった。
「馬鹿馬鹿しい」と笑い飛ばすのである。
「馬鹿だなぁ」と事態を笑いに転換するのだ。
「笑い」こそ、何者にも勝る武器はないなあと、このところ思いを強くするのである。
・・・「あたま山」という噺は、私が落研に入部して初めて演った想い出(トラウマ)の噺です。
先輩から、「馬鹿馬鹿しいけど、馬鹿馬鹿しいと思って演ったらいけない」と言われたのを思い出します。
« 感染者数 | トップページ | 松戸市の公式ツイッター »
「書籍・CD・DVD」カテゴリの記事
- 新曲発売日(2020.07.22)
- 上方落語四天王の本(2020.06.15)
- 落語暦(2020.05.23)
- 「緊急事態宣言」の歌(2020.05.19)
- からぬけ落語用語事典(2020.05.15)
「落語・噺・ネタ」カテゴリの記事
- 稽古をした演目(2020.09.09)
- 十八番(2020.07.13)
- 「紺屋高尾」と「幾代餅」(2020.06.18)
- 落語DEデート(2020.05.24)
- 古今亭志ん朝を聴きながら(2020.05.23)