「ねずみ穴」への思い
このブログで何度か触れたことがあるのですが。
先日の、演読亭で「ねずみ穴」の演読をした時に話した、この噺との思い出。
師匠から、「この噺の高座本の巻末に載せるから、ちょっと一文にしてよ」との依頼がありました。
・・・ということで、ちょっとまとめてみました。
◆「ねずみ穴」と火事と圓生師匠
あれは忘れもしない、1976年10月29日の夜のことでした。
私は大学2年生、落語研究会に所属していました。
当時は、今と違って、インターネットなどありませんから、地方の貧乏学生にとって、落語を聴く機会は限られていて、テレビやラジオの演芸番組は大変貴重な時間でした。
放送をカセットテープに録音し、個人ライブラリーにしていたものです。
あの夜も、NHK第一放送で東京落語会の公演を放送されました。
この時の演目が、三遊亭圓生師匠の「ねずみ穴」でした。
憧れの圓生師匠のほぼリアルタイムで聴くことが出来ると、録音しながら、一言一句も聴き逃すまいと放送に聴き入っていました。
噺が、竹次郎がねずみ穴が気になっている場面にさしかかった時、突然、「放送の途中ですが、ここでニュースをお知らせします」という無粋なアナウンスが入りました。
「ええぇ、折角の落語が台無しじゃないか」と思わず叫びました。
「山形県酒田市で大規模な火災が発生し、現在も延焼しています」という、臨時ニュースが繰り返されました。
この火災こそ、山形県酒田市中心部の商店街約22.5haを焼失した酒田の大火でした。
その後、カセットでこの圓生師匠の「ねずみ穴」を聞く度に、当然このニュースも繰り返し聴かされることになりました。
火事の場面で本当の火事のニュースが重なるなんて。
いつかは演りたい噺でしたが、ずっとこの時のことが思い出されて、心が痛みました。
この時の放送を録音したカセットテープは、今も実家に残っているはずです。
私にとっての「ねずみ穴」は、「臨時ニュース」と「酒田大火」と「カセットテープ」の”三題噺”で、"五臓の疲れ"ではありませんでした。
・・・どうと言うこともありませんが、こんな感じかなぁ・・。
1976(昭和51)年10月29日17時40分頃、山形県酒田市中町2丁目にあった映画館「グリーンハウス」のボイラー室から出火。
すぐに観客20名は避難したが当日は風が強く、またたく間に隣接していた木造ビルや木造家屋に燃え広がった。
火災は西よりの強風(元々酒田市周辺は、日本海から内陸部への風の通り道であり、最大瞬間風速26.7mの風が吹いていた)によって更に範囲が拡大。
その強風により大量の飛び火や火の粉が発生し、消火活動が思うように進まなかった。
日付が変わった30日の3時には火勢は新井田川まで迫ったものの、対岸からの直上放水実施や降雨の影響で延焼を食い止めることが出来たため、5時に鎮火した。
明日で、あの大火からちょうど43年になります。
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