さん喬師匠の高座のレビュー
広瀬和生さんの、柳家さん喬師匠の高座のレビューを見つけました。
八月二十一日、東京・日本橋劇場での柳家さん喬独演会「さん喬十八番集成」に出掛けた。
吉原で安い店に上がった落語家がひどい目に遭う一席「徳ちゃん」を軽く演じてから、そのまま「お直し」へ。
花魁が店の若い衆といい仲になり、主人の計らいで所帯を持つ噺だ。
亭主の不義理で店にいられなくなった二人は「蹴転(けころ)」という最下級の店を始め、女房は亭主に頼まれ遊女に逆戻り。
だが客にこびを売る姿に嫉妬した亭主は何度も「お直し(延長)だよ」と割って入り、客が帰ると夫婦げんか。仲直りしたところにさっきの客が戻ってきて「直してもらいなよ」…。
このせりふがとても優しいトーンで「しっかりやりなよ」と応援しているかのようだ。腹をくくった女房の“心(しん)の強さ”が見事に描かれている、すてきな「お直し」だ。
後半は人情噺(「ちきり伊勢屋」。ちきり伊勢屋という大店の若旦那、新次郎が易の名人に死期を告げられて店を畳み、葬儀まで行うが、人の命を救ったことで運命が変わって生き延びる。
さん喬は、たいこ持ちの善平という男と新次郎の友情を軸にした演出を考案。
親子心中しかけた父と二人の娘を助けて三百両を恵んだ新次郎は、姉お鶴と恋に落ちるが、やがて死ぬ身と去っていく。この切ない別れをさん喬は濃密に描いた。
新次郎は紆余曲折(うよきょくせつ)を経てお鶴と再会、夫婦となってちきり伊勢屋を再興するというハッピーエンドへ。
上、下で二時間かかる長編を一時間に編集し、まるで映画を見ているかのように観客を引き込む技量はさすがだ。
夫婦の情愛を細やかに描く「お直し」、運命に翻弄されながらさまざまな人との出会いに助けられる新次郎の人生を描いた「ちきり伊勢屋」。
さん喬の真価を発揮する大ネタ二席だった。
・・・「徳ちゃん」から「お直し」のパターンは、先日(9月10日)の独演会でも聴かせていただきました。
「ちきり伊勢屋」もやりたいなぁ。
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