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2019年8月28日 (水)

もう1つのリクエスト

もう一つ、以前からリクエストをいただいていて、なかなか手が着けられていなかったこと。
以前にも触れましたが、ある先輩に、「乱志君の語りでやってもらいたい噺がある。無理にとは言わないが」と、リクエストされた噺があります。
「算段の平兵衛」という上方噺です。
やり手がなく滅んでいた噺を、昭和の戦後に三代目桂米朝が先人から断片的に聞き集め、復刻した大ネタ。
くすぐりが非常に少なく、なおかつ人の死体やエゴに満ちた登場人物を陰惨に感じさせずに描写する必要があり、演者にとっては技量が試される。
米朝は「悪が栄えるという内容なので、後味が悪くならないように演じるのが難しい。平兵衛をどこか憎めない男とか、共感するようなところあるように描かないと落語として成り立たない」と論じている。
・・・という噺。
「いやぁ、別にどうしてもという訳じゃないんだけどね」
「どうかな。あたしも歳を取って来たからね。」
・・・という、とっても温かいお言葉。
とにかく、上方弁を江戸弁に翻訳しないといけません。
米朝師匠のをベースに、翻訳しながら紙に落とす作業を始めました。
取り敢えず、導入部分の1ページまで進みました。
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世の中が随分変わって、良く分からない言葉と言うのが増えてまいりました。
例えば、「算段」なんていう言葉も使われなくなりました。
それでも、「やりくり算段」なんていう言葉だけが、まだ何となく生きているようですね。
「ちょっと算段して」とか「彼は算段が上手いから」とか「そういう算段は彼だ」なんて、
時々出て来るように思いますが。
色々と「算段」をする。ちょっとした無理でも何とか収めてくれるとか、お金が足りなくても上手く間に合わせるとか、そういうことに長けた人が、どこにでも必ずいるようで。
これから申し上げます「算段の平兵衛」は上方の噺で、人間国宝だった桂米朝師匠が、ほとんど演り手のいなかったのを掘り起こしたものなんだそうです。
どうして、演り手が少なかったかと申しますと・・・、要するに面白くないからだという。
そんなつま・・、いや、あまり面白くない噺を、なぜ私が演るのかということですが・・・、
これには深い・・ことはありませんが、ちょっとした経緯があります。
とある、落研の大先輩から、「まぁ、無理にとは言わないよ。無理しなくていいんだけど、
こんな噺を聴いてみたいと思うんだが、無理には言わないよ。でも私も長くないから」・・・。
・・・という訳で、舞台を江戸に移しまして、暫くの間ご辛抱をお願いいたしますが。
・・・と書き換えました。
さて、この長講、最後まで翻訳した高座本が出来上がりますかどうか・・・?
先輩、お身体を大切にしていただいて、もう少しお待ちください。

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