清方と江戸の粋 三遊亭圓朝とのかかわり
三遊亭圓朝生誕180年記念「清方と江戸の粋 三遊亭圓朝とのかかわり」
鎌倉の「鏑木清方記念美術館」で30日まで開かれている特別展。
いいなぁ。行ってみようかなぁ。
鏑木清方は、13歳の時、挿絵画家への道を歩み始めました。
その決断には、『やまと新聞』の主宰者だった父の條野採菊と、父の友人であり、創作落語で人気を博した落語家の三遊亭圓朝による後押しがありました。
圓朝とは、18歳の時に彼の野洲(現・栃木県)への取材旅行に同行し寝食を共にするなどの交流もありました。
後に美人画の名手となる清方の美意識や画風の形成には、江戸の香りが色濃く残る明治の東京の風俗が強く影響しています。
また、新しい時代の文化の担い手の一人である三遊亭圓朝の、創作への紳士な姿勢を目の当たりにしたことにも、大きく影響されました。
そして、画家の道へと背中を押してくれた名落語家への感謝と敬愛は、昭和5年(1930)、52歳の時に描いた肖像画の傑作《三遊亭圓朝像》(重要文化財)に結実しました。
本特別展では、三遊亭圓朝の生誕180年を記念し、明治時代の寄席や芝居にまつわる作品や資料とともに、清方と落語家 三遊亭圓朝のかかわりをご紹介します。
産経新聞でも紹介されています。
■明治20年代東京の色濃く残る香り
「大圓朝」と称される近代落語の祖、三遊亭圓朝の生誕180年を記念した特別展「清方(きよかた)と江戸の粋 三遊亭圓朝とのかかわり」が鎌倉市鏑(かぶら)木(き)清方記念美術館で開かれている。
実は鏑木清方(1878~1972年)は17歳のとき、圓朝の取材旅行に同行。創作に向かう名人の姿勢に触れた。
〈絵の道〉を歩み始めたばかりの画家の背中を押してくれた恩人が圓朝だった。
◆しっかり者
奥山景布子(きょうこ)著『圓朝』が2月に中央公論新社から出版されている。
圓朝の一代記。一場面を引用したい。
圓朝の元に放蕩(ほうとう)息子からはがきが届く。絵が描いてある。筆遣いを見て〈一度は絵師を志したこともある自分の血を、確かに引いている〉と感じる圓朝。自身は歌川国芳の下で浮世絵を学び、画技を生かした道具入りの芝居噺(ばなし)で人気を得た。
独白が続く。〈--そういえば、採菊の息子の健一君も、絵の道に進みたいと言っていたな。あちらはまだ十二、三歳だが、しっかりした少年だ。どこかへ一緒に弟子入りしてもらったら良いかもしれない〉
〈採菊〉とは戯作者の條野採菊。
「東京日日新聞」「やまと新聞」の創刊者でもあり、圓朝の落語を口述筆記して「やまと新聞」で連載し、評判を呼んだ。
その息子が後の清方(本名・健一)というわけだ。
〈健一君〉のそれ以上の記述は同書にはないが、この少年は明治24年、13歳で日本画家の水野年方に入門。
27年に「やまと新聞」で挿絵を担当し、翌28年10月には圓朝の弟子に代わって創作噺の取材に同行して、野州(やしゅう)(下野(しもつけ)国、現・栃木県)への旅を経験する。
〈お前さんは何もしなくてもいいからなんでも写生さえしていればいい。わたしはわたしで勝手に書きものをするから〉と圓朝に言われたと、後に清方は随筆に記している。
同館学芸員の鏑木祐子は「この旅で17歳の清方は50代後半の圓朝を見て、創作に対するプロの姿勢を目の当たりにした。絵の創作姿勢に少なからず影響を与えられたのでは」と話す。
◆震災前の風景描く
今回展示された、半紙をとじた「野州旅日記」などの写生帳を清方は生涯、大事にした。
健脚でずんずん歩いていく圓朝。山道の先に小さく描かれた人影は圓朝本人かもしれない。
この旅は、かっけにかかった清方の転地療養も兼ねていた。
一人前の画家になった報告と感謝の気持ちを込めて昭和5年、52歳のときに描いたのが重要文化財に指定された肖像画「三遊亭圓朝像」(今回は下絵を展示)だ。
10年頃には「京橋金沢亭」。
戦後の23年には「朝夕安居」(写真は夕の部分)。
いずれも江戸の香りが色濃く残る明治20年頃、圓朝と交遊のあった少年時代の東京・下町。関東大震災で失われる前の風景を描いている。
清方の下地となった心のふるさとだ。
京橋金沢亭は1階が住居と楽屋で、2階の大座敷が客席。
当時の銀座は高い建物がなく、窓を開ければ夜空が見えた。
窓の外には圓朝の看板。圓朝が出ると他の寄席はがらがらになり、「八丁荒らし」と言われた。
外を見ている少年は清方自身かもしれない。
「清方は美人画家のイメージが強いが、むしろ、後世に残したい東京の姿を追想して描いた絵に、より清方らしさが出ているのではないか」と鏑木は語った。圓朝誕生180年ですか。
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