« 禁演落語を聴く会 | トップページ | 蔵前神社 »

2019年5月31日 (金)

子鹿に触らないで

大仏に 鹿の巻き筆 奈良ざらし 春日燈籠 町の早起き
・・・これが、古都奈良の名物とされています。
そう、奈良と言えば「鹿(シカ)」です。
公園内をシカが自由に歩いていますが、これを「ハナシカ」・・・とは言わないか。
「鹿政談」などという落語の名作もあります。
12233aabfc2d4ddd9f634bb00fbaa372
そんな奈良のシカですが、奈良公園では、野生のシカの出産がピークを迎え、かわいい子鹿が続々と誕生していますが、生まれたばかりの子鹿に触るのは厳禁だそうです。
と言うのは、「子鹿に人間の匂いが付いてしまうと、お母さん鹿が子育てをしなくなります。お母さん鹿がいなくては、子鹿は生きていけません」と。
へぇぇ、そんなことがあるんですね。
観光客が、「子鹿に触っちゃあ、ダメなんでシカ」って?
F06c4a708aa64f3495049d1a9cfeac65 
奈良三条横町というところに、豆腐屋渡世を営む老夫婦が住んでいた。
主である与兵衛が朝早くから起きだして表に出てみると、大きな赤犬が「キラズ(卯の花)」の桶に首を突っ込み食べていた。
与兵衛が手近にあった薪を犬にめがけて投げると、命中し赤犬は倒れてしまう。
ところが、倒れたのは犬ではなく鹿だった。介抱の甲斐も無く鹿は死亡。
当時、鹿を担当していたのは目代(代官)の塚原出雲と、興福寺の番僧・了全の二人。
この二人が連名で願書を書き、哀れ与兵衛はお裁きを受ける身に…。
この裁きを担当することになったのは、名奉行との誉れが高い根岸肥前守。
お奉行様とて、この哀れな老人を処刑したいわけではない。
何とか助けようと思い、与兵衛にいろいろとたずねてみるが、嘘をつくことの嫌いな与兵衛はすべての質問に正直に答えてしまう。
困った奉行は、部下に鹿の遺骸を持ってくるように命じた。
遺骸をじーっと見て、ひと言。
「これは鹿ではない、犬だ。鹿には角がなくてはならない。しかし、これには角が無いではないか。犬ならば裁きの必要はない、この願書は差し戻しといたす」
一同感心して「これは犬でございます」。
中には、「今、ワンと鳴きました」と同意する人も出てくるが、鹿の守役、塚原が「鹿は毎年春、若葉を食しますために弱って角を落とします」と異議を唱える。
奉行、またしばらく考え、「そこまで申すのなら、鹿の前に別の事を調べねばならぬ」と言い出した。
この頃、鹿の餌料を着服している不届き者がいるという。
毎年幕府から下されている鹿の餌料は三千両で、鹿の腹が満たないわけがない。
「神獣」とはいえやはり動物。
空腹に耐えかねて城下にさまよい出てしまったのだろう。
「もし、この裁きを続けたいのであれば、今度は鹿の餌料を横領した者の裁きを始めねばならぬ」と再度、死骸が犬か鹿かの確認を塚原に迫る。
身に覚えがあった塚原は、たまらず「わたくし、歳のせいか犬と鹿を取り違えてしまったようで…」
これにて一件は落着。お白州の後、涙を流す与兵衛に奉行が声をかける。
「与兵衛、斬らず(キラズ)にやるぞ」
「達者(マメ、豆)で帰れます」。
・・・ところで、奈良ではシカは「神の使い(神鹿・神獣)」ですが、その他の地域では「害獣」になっています。
困ったものです。

« 禁演落語を聴く会 | トップページ | 蔵前神社 »

テレビ・ラジオ・新聞・雑誌」カテゴリの記事