千早亭永久「おせつ徳三郎」
2017年9月の「千早亭落語会」では「おせつ徳三郎」。
この噺は、上下に分かれた長講で、上は「花見小僧」という滑稽噺、下は「刀屋」という人情噺になっています。
(前半の部分をさらに2つに分ける場合もあるようですが。)
私は、「刀屋」を演らせていただきました。
この噺は、男の側から見た純愛物と言っていいと思います。
本来なら、御法度となる男女の仲を描いたものです。
http://ranshi2.way-nifty.com/blog/2017/09/post-a6f7.html
http://ranshi2.way-nifty.com/blog/2017/10/post-9227.html
仕事の都合で、なかなか扇子っ子連の稽古に行かれないので、落語っ子連で稽古を積みました。
落語っ子連の方が、じっくり、みっちり、しっかりした稽古が出来ますし。
この噺のポイントは、主人公の徳三郎とおせつ、そして刀屋の主人の人物設定が大事なのと、神田辺りか日本橋久松町、さらに大川を越えて木場までと、距離感も踏まえた舞台設定が重要です。
以前、それぞれの場所を歩いたことがありますから、地図や写真を広げて、おせつと徳三郎が、それぞれ2人の思い出の場所に駆けつける間の心理状態を考えて設定しました。
そうそう、雨も降り出しましたから。
秋の「千早亭落語会」は、千早地域文化創造館との共催の形ですから、立派なプログラムも作っていただきました。
「おせつ徳三郎」は、初代春風亭柳枝が作った現存落語中屈指の大作。
上中下に分かれ、上を「花見小僧」、中を「隅田のなれそめ」、下を「刀屋」とよぶ。
「お節徳三郎恋のかな文」「連理の梅ヶ枝」という別名もある。
大店の主人が娘のおせつに婿をとろうとするが、おせつは奉公人の徳三郎と恋仲だったため徳三郎に暇を出す。
徳三郎はおせつを殺して自分も死のうと刀屋に立ち寄るが、刀屋の主人が意見する。
そこへ、おせつが婚礼の席から逃げ出したという情報が入る。
徳三郎は飛び出して両国橋のところでおせつに会う。
2人はあの世で夫婦になろうと「南無妙法蓮華経」と唱えて深川の木場の橋から川に飛び込むと、下は一面の筏。
「徳や、なぜ死ねないのだろう」
「死ねないわけだ。いまのお材木(お題目)で助かった」。
この噺(はなし)は明治・大正・昭和にかけて多くの噺家が口演したもので、上の会話のおもしろさ、下のしみじみとした聴かせ場など、話芸としての価値は高い。
・・・師匠の高座本では、舞台設定やオチを変えてはいますが、確かに名作だと思います。
そして、高座で演っていて、何とも言えない愛おしさのようなものを感じました。
単に筋が面白いからとか、純愛物だからと、安易な気持ちで中途半端に演って欲しくない噺です。
« 天上天下唯我独尊 | トップページ | 落語のフラ »
「落語・噺・ネタ」カテゴリの記事
- 稽古をした演目(2020.09.09)
- 十八番(2020.07.13)
- 「紺屋高尾」と「幾代餅」(2020.06.18)
- 落語DEデート(2020.05.24)
- 古今亭志ん朝を聴きながら(2020.05.23)