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2019年4月 2日 (火)

千早亭永久「通夜の猫(猫怪談)」

2014年4月の千早亭落語会では「通夜の猫(猫怪談)」でした。
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この時は、会場の都合で、3月中でなく、4月5日に開催しました。
おかげで、ちょうど高座の後ろには、桜の花が咲いていて、開演までの間、カーテンを開けて、客席から花見をしていただきました。
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「猫怪談」は、学生時代に演ってはいましたが、谷中や深川蛤町などの地理も良く知らず、また寺事のことも分かりませんでしたから、ただ速記本を読んだだけのレベルだった気がします。
師匠の高座本は、かなり暗い(陰湿な)噺なので、「通夜の猫」と改題して、内容も変えられていました。
それでも、死んだ猫が化ける・・というのは。
どうもね落語の中の猫は、化けたりして、あまり良いイメージではありません。
犬やねずみですら、落語の主人公(ヒーロー)になっているのに、どういう訳が猫は・・・。
「猫定」なんていうのは、その象徴かもしれません。
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私とは、主人公の与太郎を軸に、人情噺に仕立てました。
親孝行の与太郎が父親(養父)の亡骸に向かって、「お父っつぁん、なぜ死んじまったんだよう・・・」と語る。
与太郎を目立たせたのは、この噺と「佃祭」。
愚かしいけれども、心は純粋なキャラクターが、落語国にはぴったりかもしれません。
「猫怪談」も「佃祭」も、与太郎の台詞で、いつでも必ず泣いて(言葉に詰まって)しまう場面があります。
師匠の高座本のものではありませんが、概ねこんなあらすじです。
幼い頃に両親を亡くした与太郎を育ててくれた養父が死んだ。
与太郎は恩情を受けた養父の死が悲しくて遺体の枕元から離れられないでいる。
見かねた家主が早桶を用意し、家主が提灯を持ち、与太郎と羅宇屋の甚兵衛に早桶をかつがせて、四つの刻頃に深川蛤町の長屋を出て谷中の瑞輪寺に向かった。
不忍池の池之端に差し掛かる頃には真夜中になってしまう。
臆病者の甚兵衛さんは怖くてしょうがない。
前をかついでも、後ろをかついでも怖くて、そうこうしているうちに早桶の底が抜けて、箍が外れてばらばらになってしまった。
家主と甚兵衛さんは与太郎に仏の番をさせて早桶を買いに行った。寂しい所へ一人残された与太郎は気持ちのいいものではない。
壊れた早桶からはみ出ている養父の遺体に話しかけながら待っていると、目の前を何か黒い物が横切った。
すると遺体がむっくりと起き上がって正座をして、与太郎の顔を見て嬉しそうに「ヒィヒィヒ」と笑った。
びっくりした与太郎が平手打ちを食わせると遺体はまた横になってしまった。
何か言いたいことでもあったのかと、「お父っつぁん、もう一度起き上がってくれ」と頼むと、今度は立ち上がってピョコピョコと風と共に何処かへ行ってしまった。
しばらくすると早桶を持って家主と甚兵衛さんが戻って来た。
事の顛末を聞いた家主は、「死骸へ魔が差したんだ。折角、底が抜けた早桶の代わりを買って来たのに死骸がなきゃどうしようもねえじゃないか」。
そばでは与太郎の話を聞いて甚兵衛さんはががたがた震えている。
「甚兵衛さんどうしたんだい?」
「抜けました。抜けました」
「えっ、今買って来たばかりの早桶の底がまた抜けちまったのかい?」
「いえ、今度はあたしの腰が抜けました」
翌日、死骸が根津の七軒町の上総屋という質屋の土蔵の釘へ引っ掛かって、もうこれ以上流さないでくれと言っていたとか。
与太郎たちは三つ目の早桶を持って現場に急いだ。
一つの遺骸で三つもの早桶を買ったという、「谷中奇聞猫怪談」の一席
・・・という、暗ぁい噺。でも、大好きな噺。

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