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2019年4月11日 (木)

千早亭永久「長屋の花見」

2019年3月の「千早亭落語会」では「長屋の花見」。
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9年間稽古をして来た「扇子っ子連」を休会することになり、一区切りの高座になりました。
世はまさに卒業の季節、それぞれ違った道に進んで行く時に、私も決心しました。
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千早地域文化創造館での最後の高座かもしれません。
ここで、16席の演目を高座にかけました。
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季節もぴったりなので、最後の噺には、有名な落語の一つの「長屋の花見」を選びました。
東京の桜の開花宣言の2日後でしたから、まだ蕾が多い時期でしたが。
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長屋の連中に大家から呼び出しがかかる。
どうせ店賃の催促だろうと戦線恐々、皆にいくつ溜めているかを聞くと、「3年」、「おやじの代から」、中には「1回」と成績がいい店子かと思いきや、「引っ越して来た時、1回払ったきり」だと。
さらには「店賃とは何だ」、「そんなもの家主からもらったことがない」という強者もいる。
店子そろって恐る恐るそろって大家の家へ行き、機先を制し謝ってしまうと、長屋中で上野へ花見に行こうという話で、酒、肴は全部大家持ちという。
ほっとして喜んでは見たものの、まだ油断ができない。
案の定、1升ビン3本の酒は番茶を薄めた「お茶け」。
かまぼこは大根の薄切り、玉子焼きはたくあん、とこんな調子だ。
月番が毛せん代わりにムシロをかついで、全員やけ半分で上野のお山へ「花見だ、花見だ」、「夜逃げだ、夜逃げだ」と繰り出した。
高い方が見晴しがいいのに、上の宴会で花見客が落とす料理が転がって拾いやすいからと擂鉢山の下の枝振りのいい木の下に陣取る。
5人くらい首をくくっても大丈夫そうな桜の木を見上げて宴の開始だ。
少しでいいからというのに、月番に「お茶け」を沢山注がれて怒っているやつ、「予防注射みたいに皆で飲まなければいけない」とか、大根かまぼこをつまんで、「毎日、おつけの身にして、胃の具合が悪い時にはかまぼこおろしが効く、最近は練馬の方でもかまぼこ畑が少なくなった」なんて、一向に盛り上がらない。
大家は俳句好きの店子に一句どうだと言うと、「長屋中歯をくいしばる花見かな」で、大家もぐっと歯をくいしばり我慢だ。
すると、大声で「玉子焼き取ってください」ときて、回りの花見客がこっちを向き、大家はにっこり喜ぶが「しっぽのない所」でがっくり。
お通夜みたいな「お茶か盛り」に大家は月番に、「お前、酔え」と命令だ。
仕方なく、「さぁ酔った」と調子を合わせる月番
大家「ずいぶん酔いが早いな」
月番「酔うのも早いが、醒めるのも早い」
大家「嬉しいな、お前だけ酔ってくれて、吟味した灘の生一本だぞ」
月番「宇治かと思った」
大家「酔った気分はどうだ」
月番「去年、井戸へ落っこちたときとそっくりだ」
湯呑の中をじっと見て、
月番「大家さん、近々長屋にいいことがありますよ」
大家「どうして」
月番「酒柱が立っている」
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使う場面はありませんが、桜の花の柄の手拭いを選びました。
落語の楽しみ方は、それぞれ人によって違って良いと思いますが、自分と方向性を共有できない場所にいるのは楽しくないし、自分の描く落語像が歪められるのを見るのも辛いので、ちようど良い潮時だったと思います。
私は、真に落語が上手くなりたいから。
この噺も、季節は限定されますが、便利な持ちネタになりそうです。
「千早亭落語会」を卒業しました。

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