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2019年4月 6日 (土)

千早亭永久「二番煎じ」

  2016年3月の「千早亭落語会」で「二番煎じ」。
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この噺は、まさに「聴くと演るとでは大違い」を思い知らされました。
登場人物も多いし、場面転換もあるし、季節(寒さ)や謡や都々逸の表現、鍋をつついたり酒を飲んで酔っ払う仕草も・・・と、とにかくてんこ盛りの難しさでした。
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自分で、こんなコメントをしています。
今まで、人情噺、堅い噺・・というイメージを持たれているようですから、昨年の「蒟蒻問答」「一人酒盛」あたりに続いて、「二番煎じ」にチャレンジしてみました。
聴いているのと、演ってみるのとで、物凄いギャップがある噺であることを痛感させられました。
というのも、聴いていると、くすぐりも仕草も多くて面白いのですが、いざ演じる段になると、登場人物も多いし、謡や都々逸、火の用心の声・・・・、とてつもなく難しい。
謡と「火の用心」は、師匠からも何度かダメ出しされました。
師匠の高座本だと、45分ぐらいかかりますが、何とか30分程度にカットしました。
演じる側から言いますと、登場人物の"場所取り(決め)"に苦労しました。
それから、多くの登場人物一人一人のキャラをはっきり表現することに努めました。
とにかく、相変わらずの稽古不足ですが、今回は、「演読」の大切さというか、有効性を実感することが出来ました。
会場に来てくれた従妹からのメールで、「近くに座っていた知らないオジサマたちが、『素人にしておくのは勿体無い』と言っていた」と。
とても、とても・・・。
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師匠から、様々な指摘やアドバイスをいただきながら、自分なりの噺に仕上げて行く楽しさが分かって来た頃。
同時に、それゆえの"産みの苦しみ"も痛感し始めました。
ある冬の晩、番太が年末休みのため(東京では「番太だけでは心もとない」というので)、防火のための夜回りを町内の旦那衆が代わりに行うことになった。番小屋に集まった旦那衆はふた組に分かれ、最初の組が夜回りに出る。
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危機感のうすい旦那衆は、厳しい寒さに耐えかねて横着をきめこみ、手を出したくないので懐の中で拍子木を打ったり、冷えた金棒を握りたくないので紐を腰に結わえて引きずって鳴らしたり、提灯を股ぐらに入れて暖をとったりする。
「火の用心」の掛け声を試行錯誤しているうちに謡のようになり、新内節のようになり、端唄をうたっていくうちに、遊び自慢の雑談になってしまう。
組が交替となり、最初の組が番小屋で火鉢を囲んで暖をとっていると、ひとりが栓をした一升徳利(ふくべとも)を出してくる。
中には酒が入っており、皆に勧める。夜回り中の飲酒は禁止されていたが、「これは風邪の煎じ薬だ」と皆でうそぶき、燗をしてこっそり飲む。
「苦い風邪薬の口直し」としてししの身、味噌、焼き豆腐、ネギなどが用意され、しし鍋を作るに至り、即席の酒宴になる。
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その時、番小屋を管轄している廻り方同心が、外から小屋のにぎやかな声を聞きつけ、「番! !」と呼ぶ。酔っ払った旦那衆は最初「野良犬が吠えている」と勘違いしたが、戸を開けると侍だったために大きくあわてる。
旦那衆のひとりは火鉢の鍋の上に座って鍋を隠すが、酒は隠しきれず、同心にただされる。
旦那衆のひとりが「これは酒ではなく、煎じ薬だ」と言うと、同心は「身共もここのところ風邪気味じゃ。町人の薬を吟味したい」と言って酒を口にし、「うむ、結構な薬だ。もう一杯ふるまわんか」。
結局同心は鍋も目ざとく見つけ、鍋も酒もすっかり平らげてしまう。
旦那衆が「もう煎じ薬がない」と告げると、同心は、
「しからば、いま町内をひと回りしてまいる間、二番を煎じておけ」。
・・・とてもよい噺です。
近々、再演したいものです。

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