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2019年2月15日 (金)

乱志十八番⑯「試し酒」

少し、殻を破ってみたくて。
酒飲みの噺は、「一人酒盛」「二番煎じ」で演っていますが、もっと大胆な噺をやってみようと思いました。
この噺は、本当に演っていて楽しい。
乱志十八番「試し酒」
「試し酒」は、新作落語の範疇に入るのかもしれません。
この噺は、親子二代の速記者で、落語研究家の今村信雄(1894~1959)が昭和初期に創作した噺です。
ただし、この噺には筋がそっくりな噺もあるようです。
明治の異色の英国人落語家の「初代快楽亭ブラック」が、明治24年3月「百花園」に速記を残した「英国の落話」で、主人公が英国ウーリッチ(?)の連隊の兵卒ジョン、のむ酒がビールになっている以外、まったく同じだそうです。
この時の速記者が、父親の今村次郎ということもあって、このブラックの速記を日本風に改作したものだと思われます。
しかし、オリジナルのブラックの作または英国産の笑話かというと、それも違うようで、中国の唐代の笑話に同じようなパターンのものがあるそうですが、はっきりはしていないようです。
いずれにしても、現実感しともかくも、ダイナミックな噺です。
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初演は七代目三笑亭可楽だそうで、その可楽の演出を戦後、五代目柳家小さん師匠が継承し、ほぼ古典落語化するほどの人気作にしました。
当の作者の今村自身も、著書「落語の世界」で、「今(注:昭和31年現在)『試し酒』をやる人は、柳橋、三木助、小勝、小さんの四人であるが、(中略)中で小さん君の物が一番可楽に近いので、今、先代可楽を偲ぶには、小さんの『試し酒』を聞いてくれるのが一番よいと思う」と、述べているそうです。
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私は、「試し酒」を「一人酒盛」「二番煎じ」と酒3題としています。
この噺は、酒を飲む仕草が身上ですから、ちょっと見てみます。
ある大家の主人。
客の近江屋と酒のみ談義となる。
お供で来た下男久造が大酒のみで、一度に五升はのむと聞いて、とても信じられないと言い争い。
挙げ句に賭けをすることになる。
もし久造が五升のめなかったら近江屋のだんなが二、三日どこかに招待してごちそうすると取り決めた。
久造は渋っていたが、のめなければだんなの面目が丸つぶれの上、散財しなければならないと聞き「ちょっくら待ってもらいてえ。おら、少しべえ考えるだよ」と、表へ出ていったまま帰らない。
さては逃げたかと、賭けが近江屋の負けになりそうになった時、やっと戻ってきた久造
「ちょうだいすますべえ」
一升入りの盃で五杯、息もつかさずあおってしまった。
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相手のだんな、すっかり感服して小遣いをやったが、しゃくなので
「おまえにちょっと聞きたいことがあるが、さっき考えてくると言って表へ出たのは、あれは酔わないまじないをしに行ったんだろう。それを教えとくれよ」
「いやあ、なんでもねえだよ。おらァ五升なんて酒ェのんだことがねえから心配でなんねえで、表の酒屋で、試しに五升のんできただ」

・・・「お前の噺は、長くて・暗くて・つまらない」と言われ続けて10年近くが経過し、それじゃあ、気軽な場所で人情噺以外のものをとチャレンジしたのが、2017年11月でした。
金願亭乱志
誰でも知っている噺で、オチも「あぁぁ」という感じですから、とても便利な持ちネタだと思います。
金願亭乱志
酒を飲む仕草で、どうやって絶妙の間を作るのか。
現実と非現実をどうやって結びつけるか。
飲む仕草で、客席から拍手がもらえるか・・・。
金願亭乱志
口うるさい先輩方にも、人情噺だけじゃないぞと。

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