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2019年2月 4日 (月)

乱志十八番⑤「甲府ぃ」

同郷の人が主人公の噺です。
乱志十八番「甲府ぃ」
この噺、別名「法華豆腐」と言い、法華(日蓮宗)の宣伝噺なんて言われたりもする。
これまた、師匠の音源があるんです。
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ある朝の江戸の豆腐屋。
店頭の卯の花を盗ろうとした若者がいた。
主人が咎めると「昨日、甲州から出てきて、スリに財布を盗られてしまった。
腹がへって、悪いとは知りながら卯の花に手を出しました。すいません」と詫びる。
人柄が良さそうなので、主人は「うちで働かないか」と優しく言う。
喜んだ若者(猪之吉)はその日から住み込みで働くことになった。
主人から教わった通り「豆腐~ィ 胡麻入り~ィ ガンモド~キ」の売り声で外を売り歩き、陰日向なく実によく働いた。
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あっと言う間に三年がたった。
この豆腐屋の一人娘のお花が、どうやらに猪之吉に惚れているらしい。二人を添わせて店を譲ることにした。
また二年たったある日のこと。猪之吉が「実は江戸へ出るとき、途中に身延に寄ってお祖師さまに五年の願掛けをしました。その願ほどきをさせていただきとう存じま
す」と申し出た。
豆腐屋も宗旨は法華宗なので喜んで「お花も一緒に行って来い」と赤飯を炊いて送
り出すことにした。
出立の朝、長屋のかみさん連中から二人に声がかかった。
「ご両人、どちらへ?」
猪之吉が売り声の調子で「甲府~ィ お参り~ィ 願ほど~き」

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この噺で、師匠はこんなコメントをしています。
堅物の田舎者(猪之吉)が落ちのところでいきなり洒落を言い出すのはどう考えても不自然だ、と稽古をしはじめてすぐ気が付いた。
このことを仲間に話すと「落語だからそれでいいんだよ」と軽くいなされた。
落語という話芸はいわば虚構の世界であろうが、虚構の中にもそれなりに理屈はある。
この噺の落ちはそれからはみだしているような気がしてならないのだ。
そこで、あたしは、豆腐屋の主人に「猪之吉よ。堅いのはいいが、堅すぎるのはよくない。商いのときに洒落の一つも言えるようになれ。たまには落語を聞け」なんという小言をいわせている。
その効果が現われたか、猪之吉が赤飯を食べて「もう入りません」と箸を下ろすと、豆腐屋が「立って二、三遍はねてみろ。上のほうに隙間ができるから」と言うのだが、すかさず猪之吉が「茶袋じゃありませんよ」と返す。
豆腐屋は「洒落がわかってきたな」と喜ぶ。
そんな場面を挿入して、落ちへ継げるという演出をして、不自然さをカバーしてみたのだが、また仲間から「すぐにそんないい洒落が言えるわけがないよ」と皮肉を言われたこともあった。
話芸という虚構の世界は難しい。

・・・いずれにしても、ほのぼのする噺です。

この噺は、3年生の時に、ご当地ネタということで初演しました。
音源は、古今亭志ん朝師匠を参考にさせていただきました。
そして、社会人になって、忘れられない噺になります。
私の結婚披露宴。
山梨の石和温泉のホテルでやったこともあって、「ここぞ」とばかり、披露宴の余興のトップバッターとして、新郎が一隻ご機嫌を伺いました。
同期の宝亭六方さんと多趣味亭こり生師匠に、真打昇進よろしく、結婚披露口上をお願いしました。
新郎としては、なかなか羽織や袴を着ることができないので、落語のチャンスだということで。
この記念すべき時に、「甲府ぃ」をやりました。
2月2日
・・・まぁぁ、若いこと。
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身延山(身延詣り)は、大変身近なものでしたから、これからも「南無妙法蓮華経」の落語を覚えたいと思います。

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