「らくだ」のイラスト
これも一目で、「らくだ」の「かんかんのう」だと分かります。
長講の「らくだ」は、大看板のやるトリの噺のイメージです。
「らくだ」というのは、江戸ことばでは、体の大きな乱暴者を意味しました。
明治・大正の滑稽噺の名人三代目柳家小さんが、上方から東京に移植した噺です。
聴きどころは、気の弱い紙屑屋が次第に泥酔して、抑圧被抑圧の関係がいつの間にか逆転する面白さ。
乱暴者で町内の鼻つまみ者のらくだの馬が、フグに当たってあえない最期を遂げた。
兄弟分のこれまた似たような男が、らくだの死体を発見し、葬式を出してやろうというわけで、らくだの家にあった一切合切の物を売り飛ばして早桶代にすることに決めた。
通りかかった紙屑屋を呼び込んで買わせようとしたが、一文にもならないと言われる。
そこで、長屋の連中に香典を出させようと思い立ち、紙屑屋を脅し、月番のところへ行かせた。
みんならくだが死んだと聞いて万々歳だが、香典を出さないとなると、らくだに輪をかけたような凶暴な男のこと、何をするかわからないので、しぶしぶ赤飯でも炊いたつもりでいくらか包む。
それに味をしめた兄弟分、いやがる紙屑屋を、今度は大家のところに、今夜通夜をするから、酒と肴と飯を出してくれと言いに行かせたが、「店賃を一度も払わなかったあんなゴクツブシの通夜にそんなものは出せねえ」と突っぱねられる。
「嫌だと言ったら、らくだの死骸にかんかんのうを踊らせに来るそうです」
と言っても「おもしれえ、退屈で困っているから、ぜひ一度見てえもんだ」
と、大家は一向に動じない。
紙屑屋の報告を聞いて怒った男、それじゃあというので、紙屑屋にむりやり死骸を背負わせ、大家の家に運び込んだので、さすがにけちな大家も降参し、酒と飯を出す。
横町の豆腐屋を同じ手口で脅迫し、早桶代わりに営業用の四斗樽をぶんどってくると、
紙屑屋、もうご用済だろうと期待するが、なかなか帰してくれない。
酒をのんでいけと言う。
女房子供が待っているから帰してくれと頼んでも、俺の酒がのめねえかと、すごむ。
もう一杯、もう一杯とのまされるうち、だんだん紙屑屋の目がすわってきて、逆に、「やい注げ、注がねえとぬかしゃァ」と酒乱の気が出たので、さしものらくだの兄弟分もビビりだし、立場は完全に逆転。
完全に酒が回った紙屑屋が、「らくだの死骸をこのままにしておくのは心持ちが悪いから、
俺の知り合いの落合の安公に焼いてもらいに行こうじゃねえか。その後は田んぼへでも骨をおっぽり込んでくればいい」。
相談がまとまり、死骸の髪を引っこ抜いて丸めた上、樽に押し込んで、二人差しにないで高田馬場を経て落合の火葬場へ。
お近づきの印に安公と三人でのみ始めたが、いざ焼く段になると死骸がない。
どこかへ落としたのかと、もと来た道をよろよろと引き返す。
願人坊主が一人、酔って寝込んでいたから、死骸と間違えて桶に入れ、焼き場で火を付けると、坊主が目を覚ました。
「アツツツ、ここはどこだ」
「ここは火屋(ひや)だ」
「冷酒(ひや)でいいから、もう一杯くれ」
・・・あんまり好きなパターンの噺ではありませんが、好きな人は好きなんでしようね。
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