落語「欠伸指南」
2日目は、「欠伸指南」と行きましょう。
この噺も、比較的よく聴く噺ではありますが、静と動のコントラストを演じる必要のある難易度の高い噺だと思います。
それから、当時の娯楽がどんなものであったか、しっかり掴んでおくことも大切です。
江戸時代は、今と比べると「娯楽」というのが少なかったと言われます。
確かに、みんな貧しかったはずですから、今の「趣味」とはかなり違っていたかもしれません。
当時の庶民の娯楽って、どんなものがあったでしょうか?
色々いわれますが、例えばこんなものがあったでしょう。
【湯屋】
お金をあまりかけない娯楽と言えば「湯屋」でしょう。
お湯に入った後は、2階が休憩所になっていたので「囲碁」「将棋」を楽しんだり、お茶菓子を買うことも出来ました。
【床屋】
これも湯屋と同様、男の社交場だったはずです。
天気が悪かったり、仕事を早く切り上げた時などには、格好の娯楽場だったでしょう。
【習い事】
「常盤津」(唄と三味線)を習う本当の目的は師匠(女性)を口説くことだったようです。
また、竹刀が発明されて痛くなくなったおかげで、庶民も「剣術」を習いに道場に通い始めました。
変わった習い事もあって、
歌舞伎のセリフを習う「声色(こわいろ)」。
蕎麦や煙草に関するカッコイイしぐさを教わる「所作指南」。
「秀句指南」はダジャレを習う教室でした。
【同好会】
「俳句」や「川柳」の同人。
集まって「百物語」という怪談を披露しあう会。
難しい幾何学の問題を作って出し合う「数学同好会」のようなものもありました。
【生き物】
犬、猫、小鳥、虫といった「ペット」を愛でる。
「盆栽」を育てたり、「朝顔」や「金魚」の新種を開発する趣味もありました。
・・・これらは、どれも楽しんだのは男性でした。
「相撲観戦」も男性だけの特権でした。
老若男女が楽しんだものとなると「芝居観覧」や、貸本屋を利用した「読書」、役者絵など「浮世絵」の鑑賞といったところでしょうか。
大福や焼き芋などの「甘味」も娯楽と言えるかもしれません。
・・・ということで、習い事と言うのは娯楽の一部だったんですね。
娯楽ということは、何か極めるということではなくて、刺激や暇潰し的な色合いの方が強かったかもしれません。
そこで「欠伸指南」です。
くだらないと言えばくだらないですが、こんなことを真面目に教えたり、真顔で習ったりする人もいたかもしれない。
そういう意味では、そんなに荒唐無稽ではなかったかもしれません。
さて、その「欠伸(あくび)」です。
欠伸は、眠たいときなどに不随意に(反射的に)起こる、大きく口を開けて深く息を吸う呼吸動作です。
欠伸が出やすいのは、覚醒と睡眠の境界から覚醒に向かうときで、具体的には以下のような時に起こる。
・眠たいとき。過度に疲れているとき
・退屈なとき
・極度の緊張状態
・寝起き
また、偏頭痛発作の予兆期と頭痛期の症状のひとつでもある。
欠伸は、哺乳類以外にも爬虫類、鳥類などにも起こることが知られている。
このことや、室傍核という脳の中でも原始的な部分の働きによるため、発生学的に古い行動だと考えられている。
出かかった欠伸を無理に止めること、転じて退屈であるのを我慢することを「欠伸を噛み殺す」という。
人前で欠伸をするのは無礼なことと考えられ、欠伸をするときに口の前に手をかざしてそれを隠そうとする。
欠伸を止めるには上唇を舌で舐める、舌で前歯の裏側を押しつけるなどの方法がある。
また欠伸をするとき口を大きくあけ過ぎると顎を外す危険がある。
・・・こういう前提から、この噺は、バカバカしいと思わずに、真面目に暇潰しをしようという了見が必要です。
アホらしいと思った瞬間に入部聴き手はもっとバカバカしくなりますから、なりきることの出来る技量が必要です。
難しい噺です。
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