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2019年1月18日 (金)

落語「いかけ屋」

ちょっと順番が狂ってしまいました。
今日は、上方噺としてポピュラーな噺です。
「いかけ屋」は、上方落語の演目で、「いかけや」「鋳掛屋」とも表記します。
歴代桂春團治のお家芸として知られています。
jj
東京では、先代の桂小南師匠の十八番でした。
いかけ屋が商売の準備のため、火を起こしているところに、近所の悪童たちが「いかけ屋のオッタァーン」と奇声をあげてやってくる。
悪童たちはいかけ屋を取り囲み、「オッタン。そのプウプウ火ィ起こしてンのは、どういう目的や?」と問う。
いかけ屋が「カネを湯ゥに沸かしてる(いかけに使う金属を溶融している)んや」と答えると、ある子は「オッタン、造幣局か?」などと言ってとぼける。
悪童たちは他にも「あんさんは、細君(妻)がおわすか?」「お子さんは若子(わこ)さん(=男の子)でやっか? 姫御前(ひめごぜ=女の子)でやっか?」などと、次々と下らない質問をしてからかっては、いかけ屋の反応を楽しむ。
落語「いかけ屋」

そこへさらに「悪ガキの大将」と称される少年が来て「こら、おやじ!」。いかけ屋は気にさわり、「そういうものの言い方するもんやないで。もっと『おっちゃん』とか『オッタン』とか、可愛らしゅう言わんかい」と叱るが、悪ガキの大将は「何ぬかしやがンねん。このヘタ」と平気なものである。
「人間にヘタがあってたまるかい。何の用じゃアホンダラ」と、いかけ屋が聞けば、悪ガキの大将は「石ほじくる(または「塀に穴あける)さかい、カナヅチ貸せ」という。
「そんなもんに貸せるかい。貸したる代わりにな、家帰って、おのれとこの鍋釜の底に、ボーンボーンと、穴あけて来い!」
「そんなことしたら、お父っつぁん、お母ん、怖いがな」
「それくらいのこともできんで、一人前の悪さになれるか。おっちゃんがおまえらの頃は、カナヅチ持って、よう鍋釜の底に穴あけとったわい」
「ははあ、そンで、大きゅうなって(成長して)直しに回ってんのンか」。
いかけ屋は完全にやり込められる。

落語「いかけ屋」

「貸せ。貸せ言うとんのじゃい。貸さんかったら火ィ消すぞ」
「おっちゃんが苦労しておこした火、どないして消すねん」
「へへへ。ションベン(小便)で消したろか」
「ぬかしやがったなこのガキ。消せるもんやったら消してみい」
「ああ。何でもないこっちゃ。おい、市松ちゃんに、虎ちゃんに、みな来い。みな来い」
悪童たちは炉に向かって、一斉に小便を始める。

「あああ、ホンマに消しやがった!」
いかけ屋の嘆きをあとに悪童たちは次の標的、うなぎ屋をめざして駆けて行くのであった。
落語「いかけ屋」

いつも思うのは、日本というのは本当にエコな国だったんですね。
こういう家庭で使う物(衣類や台所道具など)のメンテナンスも、し尿処理も、しっかりリサイクルの形が出来上がっていました。
落語にも、「たが屋」「羅宇屋」「屑屋」「水屋」・・・・。
食べ物ばかりでなく、訪問販売をする商売がたくさんありました。
jj
小南師匠で思い出しましたが、やはり十八番だった「菜刀息子」では、こういう物売りの売り声で、時間や季節の変化を表現していました。
豆腐、鍋焼きうどん、筍、蕗、簾、金魚、西瓜、栗・・・。
 (カラスが)カァ~ッ カァ~ッ・・・
 ト~~フぃ~ッ 豆腐
 「お父っつぁん、夜が明けましたがな。とうとう帰ってきません
 でしたな」
 「女の子じゃあるまいし、心配せんでもイイ。ちょっとぐらい苦労
 すんのが身のためじゃ」。
 火の用~~心 火の用~~心・・・
 鍋ぁ~べ焼~き~うど~ん・・・、ぬくいのどォ~でやす
 (カラスが)カァ~ッ・・・
 砂~ 磨き砂~・・・
 「お父っつぁん、ぬくぅなって来ましたな」
 「ボチボチ春じゃなぁ~」。
 竹ぁ~けの子ッ 蕗(フキ)屋ぁ~竹ぁ~けの子ィ
 麦茶~ 初ッ太鼓~~
 葦(よ)~~しや スダレは要りまへんか~いナ
 スイカ~ スイカ~ 種まで赤ッかいよ~
 金魚~~エ 金魚~~ッ
 栗屋 焼き栗~ 丹波渓の短栗
 甘いミカン 甘いおミカンど~じゃい~
 さや豆ぇ~ 鉄砲豆ッ
 しめ縄 飾り縄ぇッ
 七草あぇッ 七草あぇッ

・・・そして、どの時代にも、いたずら小僧はいたものでした。

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