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2019年1月 4日 (金)

落語「麻のれん」

お正月なのに、真夏の噺の話題です。
五十音順にやっていますので、お許しいただくことにします。
「麻のれん」、「暖簾」と「蚊帳」が主役の軽妙な噺です。
この噺は、九代目入船亭扇橋師匠と、お弟子さんの扇辰さんが独壇場です。
扇橋師匠は、この噺といい「茄子娘」といい、不思議な噺が得意で、キャラは違いますが、扇辰さんが見事に継承しています。
「暖簾」はともかく、「蚊帳」はほとんど見なくなりました。
私も、中で寝た記憶はほとんどありません。
昔は、蚊だけでなく、様々な虫たちと共存していましたから。
落語「麻のれん」
この噺は、想像力を発揮してもらう格好の噺です。
以前、このブログでも、図に描いて説明したことがあります。
落語「麻のれん」
蚊帳を吊らなくては生活できないという時代の噺。
按摩の杢市は、強情で自負心が強く、目の見える人なんかに負けないと、いつも肩肘を張っている。
療治も終わって夜も遅いので、旦那が泊まっていけというので甘えることにした。
女中に離れ座敷に柔らかな床を取らせ、夏のことなので、蚊帳も丈夫で涼しい麻のを用意してくれて、その上、枕元には番茶を土瓶に入れて置いてくれた。
「目明きは色々な物が見えるから、欲しい物まで見えてくるが、目が見えなければそんな事も起こらない」と強がりを言う。
「車に突き当たるのは決まって間抜けな目の見える人で、夜道で突き当たられるのは目が見える人で、だから提灯を持って歩いているのだと言ったら、『火が点いていません』と言われてしまった」。
支度が出来たので、女中が部屋まで連れて行くというのを、勝手知っているから大丈夫だと断り、一人でたどり着いたはいいが、入り口に麻のれんが掛かっているのを蚊帳と間違え、くぐったところで座ってしまった。
まだ外なので、布団はない。
「布団は敷いていないし、枕元のお茶もない。手を広げると届くいやに狭い蚊帳だ」と、ぶつくさ言っているうちに、蚊の大群が大挙して来襲。
杢市、一晩中寝られずに応戦しているうち、力尽きて夜明けにはコブだらけ。
まるで、金平糖のように刺されてしまった。
翌朝、 旦那がどうしたのと聞くので、「小さな蚊帳で天井もなく、布団も敷いてなかった」と事情を説明すると、旦那は、蚊帳を吊るのを忘れたのだと思って、女中をしかるが、杢市が蚊帳とのれんの間にいたことを女中から聞いて苦笑い。
杢市も納得して帰った。
しばらくたって、また同じように遅くなり、泊めてもらう段になった。
また懲りずに杢市の意地っ張りが顔を出し、止めるのも聞かず、またも一人で離れの寝所へ。
今度は女中が気を利かせて麻のれんを外しておいたのを知らず、杢市は蚊帳を手で探り出すと 「これは麻のれん。してみると、次が蚊帳だな」。
二度まくったから、また外へ出た。

・・・面白い噺です。
落語には、目の見えない人が頻繁に出て来ます。
中には、障害のある人への配慮と称して、自粛する人がいますが、私には違和感があります。
落語は、差別ではなくて、様々な人がいるのを、自然に受け止めていますから、差別でも何でもない。
業を受け入れた世界は、とにかく自然です。
蔑視や軽視や虐めはありません。
これが、落語国の素晴らしさなんです。

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