乱志十八番①「花色木綿」
先日書いていただいた「金願亭乱志十八番一覧」から、それぞれの噺の思い出を語ることにします。
開口一番は、やはり「花色木綿」からでないといけないでしょう。
花色木綿というのは、"はなだ色"で、裏地に使われる木綿。
縹色(はなだいろ)とは、古くから知られた藍染めの色名で、藍色よりも薄く浅葱色よりも濃い色のこと。
古くははなだ色、平安時代は縹色、江戸時代は花色と色名を変えて伝わった。これが花色木綿。
"花色"と言うから、最初は勝手に、赤系統か黄色系統のものかと思い込んでいました。
私にとっては、大学2年になって最初に取り組んだ噺です。
この噺を選んだのは、殻を破りたかったからです。
前年に落研に入部してすぐには、先輩からの指示で「あたま山」を演りました。
以前にも触れたことがありますが、この噺は、恐らく初心者には退治出来ない噺でした。
http://ranshi2.way-nifty.com/blog/2019/01/post-ba8d.html
次に選んだのは、落語らしい落語をと「千早振る」でした。
しかし、いずれもリズミカルに笑いを誘う噺ではなく、生意気にも、不完全燃焼を感じていました。
そんな頃に出会ったのが、八代目春風亭柳枝師匠の「花色木綿」でした。
とにかく、あの時の私は、受ける噺に飢えていましたから。
2年生の前半は、ほとんど「花色木綿」一色でした。
それでも、前半の「出来心」の部分は、小さん師匠や柳朝師匠の音源や速記を参考にしたり、マクラでは泥棒の小噺、例えば浅草の観音様のお賽銭(仁王様)だとか、料理屋に入った泥棒とか、色々仕込んでやりました。
とにかく、とんと~んと会話が進むリズムが楽しかった。
・・・
「先祖伝来の刀が一振り」
「長剣か短剣か?」
「じゃんけんだ」
・・・
「銘はあるか?」
「姪はいねぇんですよ。神田に叔母さんが一人」
「身内を聞いてるんじゃない」
「裏が花色木綿」
「刀に裏が付くか」
「丈夫で暖かだ」
・・・
そして、4年生の時、この噺を引っ下げて?私は勇躍、「第1回全日本学生落語名人位決定戦」に出場します。
「審査員特別賞」・・って、よく分からない評価。
審査員の柳家小さん師匠と小島貞二先生からコメントを頂戴しました。
http://ranshi2.way-nifty.com/blog/2018/06/post-47e4.html
という訳で、この噺なくしては、金願亭乱志は語れません。
3年生以降になると、人情噺志向になって行きますので、回数は減りましたが、ポイントのところでは、何度も演っています。
何と言っても、若い頃覚えた噺ですから、「今、ここで何かやってください」と言われても、この噺と、「子ほめ」と「浜野矩随」は、すぐに演ることが出来ます。
そう言えば、あの「東日本大震災」の後、南三陸に出前落語に行きました。
その時も、迷わずこの噺を選びました。
金願亭乱志の飛躍点となった、大切な噺です。
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