落語「犬の目」
ナンセンスで軽妙な噺です。
目が悪くなって、医者に駆け込んだ男。
かかった医者がヘボンの弟子でシャボンという先生。
ところが、その先生が留守で、その弟子というのが診察する。
「これは手術が遅れたので、くり抜かなくては治らない」
さっさと目玉をひっこ抜き、洗ってもとに戻そうとすると、水でふやけてはめ込めない。
困って、縮むまで陰干しにしておくと、犬が目玉を食ってしまった。
「犬の腹に目玉が入ったから、春になったら芽を出すだろう」
「冗談じゃねえ。どうするんです」
しかたがないので、「犯犬」の目玉を罰としてくり抜き、男にはめ込む。
今までのより遠目が利いてよかったが、
「先生、ダメです。これじゃ外に出られません」
「なぜ?」
「小便する時、自然に足が持ち上がります」
さて、噺の中で出て来るのが「ヘボン先生」という目医者さん。
「へぼな」というのとかけているのかと思いきや、実在の偉人であることが分かりました。
ヘボン先生とは、ジェームス・カーティス・ヘボン(1815年3月13日〜1911年9月21日)。
米国長老派教会系医療伝道宣教師であり、ヘボン式ローマ字の創始者、医師。
ペンシルベニア州ミルトン出身。幕末に訪日した。
明治学院(現在の明治学院高等学校・明治学院大学)を創設、初代総理に就任。
日本に来て、医療を武器に信用を獲得していった。
専門は眼科で、当時眼病が多かった日本で名声を博したという。
日本人の弟子を取って教育していたが、奉行所の嫌がらせもあり、診療所は閉鎖になった。
博士のラウリー博士宛ての手紙によると、計3500人の患者に処方箋を書き、瘢痕性内反の手術30回、翼状片の手術3回、眼球摘出1回、脳水腫の手術5回、背中のおでき切開1回、白内障の手術13回、痔ろうの手術6回、直腸炎1回、チフスの治療3回を行った。
・・・そうか、「眼球摘出1回」というのが、この噺の・・・な訳ありませんが。
白内障の手術も1回を除いて皆うまくいったという(1861年9月8日の手紙)。
また、名優澤村田之助の脱疽を起こした足を切断する手術もしている。
その時は麻酔剤を使っている。
・・・私は、犬は目をどうしたんだろうと心配してしまいますが、落語はそのあたりは気に留めません。
「お江戸あおば亭」でも、「杜の家くるみ」さんと「恋し家古狂」師匠がお演りになったぐらい、軽妙で面白い噺だと思います。
でも、その筋からは「動物虐待だ」と言われるかもしれません。
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