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2019年1月29日 (火)

落語「氏子中」

これは、いわゆるバレ噺といわれるものですね。
別の言い方をすると「艶笑噺」と言います。
「氏子中(うじこちゅう)」は、同じ氏神を祀る人々(氏子仲間)のこと。
この噺は、戦時中は「禁演落語」とされていました。
禁演落語というのは、戦時中の昭和16年10月30日、時局柄相応しくないないということで、当時の噺家たちが率先して禁演とした落語のこと。
今でいうと、放送禁止語みたいなもので、業界の自粛ルールです。
浅草寿町(現在の台東区寿)にある長瀧山本法寺境内の「はなし塚」に葬られて自粛対象となったものです。
時局柄相応しくないものというのは、廓噺や間男の噺などを中心とした53演目の噺。
戦後の昭和21年9月30日、「禁演落語復活祭」によって解除。
建立60年目の2001年には落語芸術協会による法要が行われ、2002年からは、はなし塚まつりも毎年開催されているそうです。
落語「氏子中」
与太郎が越後に商用に出かけ、1年半ぶりに檜物町五番地に帰って来ました。
23~24歳のかみさんのお美津の腹が木魚のように膨れているので、与太郎もこれにはビックリ。
男の名を言えと問い詰めても、お美津はケロッとして、「亭主が居てはらむのは世間では当たり前。亭主が居なくてはらむのは女の働き。おめでたいじゃないか。お前さんと一緒になってもう7、8年。近所のおかみさんがはらむのを羨ましがっていただろう。だから、お前さんが信州に行っている間に、お前さんを喜ばせようと思って、こしらえておいたんだよ」
「馬鹿げている」
「これは、あたしを思うおまえさんの一念が通じて身ごもったんだ」
「馬鹿げている。相手の男は誰なんだ」、

落語「氏子中」
「神田明神へ日参して『どうぞ子が授かりますように』とお願いして授かったんだから、いうなれば氏神さまの子だ」と言い抜けをしてなかなか口を割らない。
そこで、親分にあれだけ御願いして出掛けたのにと相談すると、
「てめえの留守中に町内の若い奴らが入れ代わり立ち代りお美津さんのところに出入りする様子なんで、注意はしていたが、女房子供が居るから四六時中番はできねえ。与太郎の留守に5、6人入れ替わりに若いのが遊びに来ていた。注意はしたんだが、身ごもってしまった。大事にするとお前も恥をかくし、俺も決まりが悪い。そこで、実は代わりの嫁さんをオレが用意していて、出戻りだがべっぴんで、駆け足は早く喧嘩も強い実にいい女だ。しかし、何も持っていない裸同様で来る女だ。来月は子供が生まれる月だ、お七夜に仲間を集めて、荒神さまのお神酒(みき)で胞衣(えな)を洗うと、必ずその胞衣に相手の情夫の家紋が浮き出る。祝いの席で客の羽織の家紋と照らし合わせりゃ、たちまち親父が知れるから、その場でお美津と赤ん坊をそいつにノシを付けてくれてやってしまえ。みんな帰った後に、料理を綺麗にして、新しいかみさんと祝言を上げれば料理も酒も一つで済む。お前は、運が向いて来たぞ」。
与太郎、嬉しいんだか、悔しいんだか訳が分からない。

落語「氏子中」
さて、月満ちて出産、お七夜になって、いよいよ親分の言葉通り、間男の容疑者一同の前で胞衣を洗うことになった。
お美津は平気の平左衛門。
シャクにさわった与太郎が胞衣を見ると「神田明神」。
「そーれ、ごらんな。疑り深いんだから。明神様のバチが当たるよ」
親分が覗き込むと「待て。まだそばに何か出ているぞ」
「ヘエ?何と出ています」
「そばに氏子中としてある」。

・・・という。
昔も、不倫や姦通なんていうのは頻繁にあったんでしょう。
今のように「DNA鑑定」などもありませんから。
最近では、成金(ITや不動産)の下半身の軽さが目立ちますが。
金にほだされる女性タレントやアナウンサーも???ですが。
落語「氏子中」
ところで、「はなし塚」に葬られた「禁演落語」は以下のとおりです。
「五人回し」 「品川心中」 「三枚起請」 「突き落とし」 「ひねりや」
「辰巳の辻占」 「子別れ」 「居残り佐平次」 「木乃伊取り」
「磯の鮑」 「文違い」 「お茶汲み」 「よかちょろ」 「廓大学」
「搗屋無間」 「坊主の遊び」 「あわもち」 「白銅(五銭の遊び)」
「二階ぞめき」 「紺屋高尾」 「錦の袈裟」 「お見立て」「明烏」
「付き馬(早桶屋)」「山崎屋」「三人片輪」 「とんちき」「宮戸川」
「三助の遊び」 「万歳の遊び」「六尺棒」 「首ったけ」 「目ぐすり」
「親子茶屋」 「悋気の独楽」 「権助提灯」 「一つ穴」 「星野屋」
「三人息子(片棒)」 「紙入れ」 「つづら間男」 「庖丁」 「不動坊」
「つるつる」 「引越しの夢」「にせ金」「おはらい(大神宮)」「後生鰻」
「白木屋」 「疝気の虫」 「蛙茶番」 「駒長」「氏子中」。

・・・「紺屋高尾」や「明烏」、「子別れ」「片棒」「権助提灯」、「宮戸川」「後生鰻」など、”時局柄”は厳しかったようです。

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