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2019年1月20日 (日)

落語「位牌屋」

この噺も「さんぼう」のうち「けちんぼう」の噺の範疇。
お店の小僧が、旦那の会話を真似て笑いを誘うパターン。
ケチな主人が行商人からたばこをせしめるところや、それをまた小僧が真似るところが、この演目の見せどころ。
落語「位牌屋」
原話は、文政7(1824)年刊の噺本「新作噺土産」に載っている「律義者」だそうです。
子どもが生まれ、番頭の久兵衛が祝いに来ても、経費がかかるのに何がめでたいと、小 言を言うほどのケチ兵衛さん。
お祝いですから味噌汁の具には何か入るでしょうね。
そこに、摘まみ菜を売りに来たので、ムシロの上に開けさせて、値切ると言うより全部で1文と言って怒らせ帰すと、こぼれた菜を小僧に拾わせて味噌漉しいっぱいにしてしまう。
芋屋が来た。
沢山買ってくれればサービスに2.3本お付けしますというと、買ってくれたと思って出してごらん。
ダメですよそれは4文ですから。
旦那が言うには「小僧を使いにやったが、まだ帰らないから、ちょいと煙草を貸しとくれ」、 芋屋「おあがんなさい」、
「いい煙草だ。商人がこんな高い煙草のんじゃいけない。家はどこだい?」

落語「位牌屋」
「神田堅大工町です」
「買い出しはどこでしなさる」、
「多町でします」
「青物の本場だ」
「時には天秤がしなるほど買います」
「それは商売細く長くで結構なことだ。御家内は」
「女房と子供一人です」
「昼飯なぞはどうしている?」
「出先の飯屋で食います」
「そりゃもったいない。梅干しの一つも入れて弁当を持って出なさい。茶とタクアンぐらいはあげるから、ウチの台所でおあがり」
「ありがとうございます」。
「そこにピョコッと出ているのはなんだい」
「あ、これは芋です」
「見せなさい。食うのがもったいないから置物にしたいぐらいだ。時に、これを一本負けておきなさい」。
タバコを一服して、この話をそっくり繰り返す。
三回目に「家はどこだい」と始めたところで、芋屋は同じセリフを繰り返し、悪態をついて帰ってしまう。
嫌がられても4文で芋を手に入れ、煙草をタダで飲むふりをして袂にしまっていた。 
落語「位牌屋」
小僧の定吉に、注文しておいた位牌を取りに仏師屋へやる。
それも裸足で行かせ、向こうにいい下駄があったら履いて帰ってこい、と言いつける。
定吉は先程の芋屋の会話を真似て
「小僧を使いにやったが、まだ帰らないから、ちょいと煙草を貸しとくれ」
「てめえが小僧じゃねえか」
「商人がこんな高い煙草をのんじゃいけねえ。家はどこだい」
「ここじゃねえか」
「何処に仕入に行くんだい」
「位牌の仕入なんて行かないよ」

「家内は多いか」
以後全部まねして、今度は位牌を誉める。
「チョットそこに出ているのは何か」
「位牌だ」
「いい位牌だ。たべるのはもったいないから、置物にしたいくらいだ。形がいい。時に、これ一本負けときな」
「おい、持ってっちゃいけねえ」。
位牌を懐に入れ、ちゃっかりオマケの小さな位牌も分捕って、一目散に店へ。
「下駄は履いてきたか」
「あ、あわてたから片っぽだけ」
「しょうがねえ。そりゃ何だ」
「位牌です」
「同じオマケなら、子供のでは無く・・・、それを何にする」
「なーに、夕べ生まれた坊ちゃんのになさい」。

・・・ちょっとブラックなオチになるのは、「後生鰻」と同じです。
落語「位牌屋」
この噺、師匠のCDにも収録されていたんですね。
面白い噺ではありますが、どうもタバコや位牌という物が、現代受けしないかもしれません。
「さんぼう」というのも、だんだん理解されづらくなっているかもしれません。

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