くすぐり
今回の「お江戸あおば亭」では開口一番を勤めましたが、いつもよりかなり気分的な負担も軽かったので、「短命」の中に、師匠の高座本にない演出やくすぐりを入れて遊んでみました。
ただ、古典落語でもあり、噺の本筋や雰囲気を壊したくないので、勿論、慎重に考えた上で。
マクラでも、かなり自由に喋らせてもらいました。
くすぐりと言えども、否、くすぐりだから準備万端でやらないと、中途半端だと滑ったり凍ったりしますから、事前にしっかり浚っておいて、前後との整合性も考えておかなくてはいけません。
今回、1ヶ所だけ、本当にほぼ即興でやった場面がありました。
出囃子待ちで、袖で立っている時にふと思いつきました。
こんな感じでした。
場面は、ご隠居の家で、伊勢屋の婿さんが立て続けに亡くなるのが腑に落ちない八五郎。
(八五郎):だけどねご隠居。どうも腑に落ちねぇんですよ。
ほら、昔から「良いことをしたら必ず良い報いがある」
ってぇじゃありませんか。
よく知りませんが、難しい言葉で何てぇましたかねぇ。
あぁ、「驕れる者久しからず」って・・?
(ご隠居):違うよ。そりゃあ例の"横浜の車屋の旦那"のことだ。
「積善の家に余慶あり」って言うんだよ。
・・・わかりますか?
先週大問題になった、某自動車メーカーのトップのことです。
客席の反応は、ちょっと間が空いてからくすくす・・・、と予定通り。
最初は分からない人が大半でしたが、少しずつ笑いが漏れて大きくなって来ている。
そこで、さらに考える間を入れるために、ご隠居に「まだ分からないかい?」と一言を言わせました。
すると、その台詞に乗って、さらにまとまった笑いが起こりました。
これが、漫才で言う"ツッコミ"でしょうか。
"ボケ"を受けて、普通の台詞でその可笑しさを倍増させる。
この"ツッコミ"は、大受けではありませんでしたが、十分に事前の想定の範囲だった気がします。
こういう客席とのやり取り、駆け引きをやるのが楽しい。
ただし、一つしくじると、滑って客席が凍り付いてしまいますから、まさに真剣勝負です。
それから、最初のマクラの部分でも、これをやってみました。
昔から、「美人薄命」ということが言われています。
・・・(中略)・・・・
ということで、(客席を見渡しながら)美人と言うのは長生きが出来ない、美人の命は儚い、美人は命が短い・・・、(正面を向いてお辞儀をしながら)ご壮健おめでとうございます。
・・・これは、想定どおり大受けでした。
これは、考えオチということになるのでしょう。
会場はこんな感じで、女性もチラホラいらっしゃっていて、昔は若かった方が多かったので・・・(失礼)。
こういうサディスティックな?くすぐりは、よく受けますね。
これは、柳家さん喬師匠が、「短命」のマクラでお演りだったものを参考にさせていただきました。
さぁこれで、かなり客席が掴めたなと思ったので、横浜の車屋にも挑戦したという訳です。
このほか、ストーリーの中に入れたくすぐりは、かなりヒット出来た手応えを感じました。
« 膝の痛み対策 | トップページ | 落語会出演者の役目 »
「落語・噺・ネタ」カテゴリの記事
- 稽古をした演目(2020.09.09)
- 十八番(2020.07.13)
- 「紺屋高尾」と「幾代餅」(2020.06.18)
- 落語DEデート(2020.05.24)
- 古今亭志ん朝を聴きながら(2020.05.23)