金願亭乱志
香取から聴きに来てくれた蝶九さんが、私が、高座に上がる前から怖い表情で、顔も青白く見えたそうです。
恐らく、夏バテでヘロヘロだったからでしょう。
まさか学士会落語会の納涼寄席でトリを取らせていただくなんて、牡丹燈籠だけに”露”ほども思っていませんでした。
既に、過去の3回の(プロではなく会員が出演する)落語会のうち2度出演させていただきましたから、仮に出演希望を出しても無理だろうと思っていました。
5周年記念で「ねずみ」、10周年記念で「一人酒盛」を演らせていただきました。
それでも、出演者を募って番組を作る苦労も知っているので、「最劣後」ということで、複数口演時間の異なる演目を挙げて、エントリーだけしたつもりでした。
恐らく、その中の「牡丹燈籠」が、納涼の旬だったからでしょう。
光栄にも出演させていただくことになり、演目も「怪談牡丹燈籠」と指定されましたが、実は不安がありました。
というのも、私が演ろうとしている「牡丹燈籠」は、原作とはかなり違っているからです。
師匠の高座本「牡丹燈籠・下駄の音」をベースにしていますが、この手の噺を原作に忠実に演ることが出来る機会や場所は、プロの方々でもなかなかないと思います。
そこで師匠が、原作をかなりデフォルメしていて纏めてあります。
高座本のページ数にして14ページ程度。
概ね1ページ1分あまりのイメージですから、本当に短くしている。
ところが、今回の客席には、東大の「学究派」と呼ばれる方をはじめ、落語に精通している方が大勢ご来場のはずですから、「これは牡丹燈籠ではない」と指摘されてしまうのではという・・・。
「目黒の秋刀魚」の赤井御門守が日本橋魚河岸から仕入れた秋刀魚を食べたような物ではと。
つまり、脂と骨を抜いてしまって、形も味も原型をとどめなくなった秋刀魚を食べさせられたのと同じ。
・・・ところが、これは杞憂に終わったようです。
「よくコンパクトにまとまっていたよ」というニュアンスの声を多く頂戴することが出来ました。
さすがに、師匠の本はよく出来ているということです。
やはり聴きに来てくれた百梅さんは、グッと間を取った時に会場内で聞こえるエアコンの音に恐怖心を煽られたと言ってくれました。
図らずも、会場のエアコンにも力を借りて、聴きながら、怖くて隣の人にしがみつく女性もいたそうですから、何とか筋をお伝えすることは出来たようです。
・・・ありがとうございました。
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