百梅さんが思い起こさせてくれた
打ち上げの時に、百梅さんと千公さんが「子別れ」の感想を言ってくれました。
千公さんは、舞台の袖で聴いていてくれて、涙が出たと。
百梅さんに、「後半の部分、先週の稽古の時と随分違っていましたね」と言われました。
実はあの日の段階では、後半の鰻屋での元夫婦の再会シーンなど、とても出来る状態ではなかったというのが実態。
とは言え、本番で心がけたことは、先月の稽古の時に師匠から言われた、この噺のキーワードは、おかみさんが2階に上がって言う台詞「・・・・、お前さんでしたの」だと言うこと。
「この一言に万感を込めること」とアドバイスされていました。
自分の不行跡が元で、妻子に苦労をかけてしまった悔恨は、恐らく常に父親の胸に強烈にわだかまっていたはず。
それで、もう生涯独り身を通す覚悟でいたけれども、偶然再会した倅を見てしまって、出来るものならもう一度、何とか3人で暮らすことが出来ないかという気持ちになった。
これが最初で最後のチャンス。
だから、見栄も恥も外聞も捨てて、ひたすら頭を下げた。
「もう一度、一緒になってもらいたい・・・」。
かくばかり 偽り多き 世の中に 子の可愛さは 真なりけり
その一心で、頭を下げた。
百梅さん、「この噺の主人公は亀ちゃんじゃないんですね。お父っつぁんなんですね」。
恥ずかしながら、実はそこまで強くは意識していなかったので、ハッとしました。
そうなんです。
「もう一遍やり直させてもらえないか」と、おかみさんに向けた言葉が、「お前さんでしたの」を受けた、なりふり構わぬ、心から出た言葉(叫び)だったんです。
もしかすると、無意識か偶然にも、私の語りは、この2人の微妙な心理を描くことが出来ていたのかもしれません。
高座での私と、登場人物たちの今をシンクロさせることが出来たのかもしれません。
そうだ、昔この噺を初めて聴いた時の感動は、この場面だったことを思い出しました。
百梅さんに鋭く指摘していただいたおかげで、私の中で、この噺がさらに素晴らしく甦って来ました。
百梅さんに感謝です。
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