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2018年6月17日 (日)

また越児さん「猫と金魚」

時間に余裕があるので、2巡目です。
また越児さん「猫と金魚」
「地元で落語をやるのに、子どもやお年寄りに受ける噺が要る」ということで、「猫と金魚」を。
この噺は、戦前の人気漫画「のらくろ」の作者である「田河水泡」原作のらくろ滑稽噺。
初代柳家権太楼が十八番にしていたそうで、わたしが聴いた限りでは、八代目橘家圓蔵師匠や十代目桂文治が得意としていました。
この噺は、芸術家・高見沢路直(のちの漫画家・田河水泡)が「高沢路亭」のペンネームで書き上げた。
高沢は収入のために創作落語を大日本雄辯會講談社の雑誌「面白倶楽部」に売り込み、同誌で連載。
世界初の専業落語作家となった。
(尤も、落語は日本だけの演芸ですから、日本で1人なら、世界でも1人です。)
この噺は、読み物として書かれ、実演を前提としていなかった。
しかし初代柳家権太楼がこれを高く評価し、高沢に高座での実演を了承してほしい旨の手紙を送った。
高沢は快諾した。
以降、権太楼はこれを持ちネタとするだけに留まらず、この演目を「初代柳家権太楼の自作」と公表していた(後者の件については、高沢の了承を取っていない)。
初代権太楼の死後かなり経って、放送局が、この演目の本当の作者が田河水泡であることを突き止め、著作権料を支払うために田河に連絡をとった。
田河は放送局に対し、著作権料は全額、権太楼の遺族(再婚相手と遺児)に廻してもらって、権太楼の霊へのはなむけとしてほしい、と伝えた。

・・・そんな逸話があるそうです。
権太楼の「偽り」が、後世「逸話」になったという。
という訳で、越児さん、軽妙な噺を選ばれました。

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