父性と母性
人情噺は、人と人との関わり合いの中で、人の琴線に触れる部分を語るものだと思いま
す。
落語ですから、綺麗ごとではなく、人の「業」を受入れて、そしてどうする(生きる)のか。
私の持ちネタでも、人と人の関わりに様々なパターンがあります。
・男と女 「おせつ徳三郎」「お露新三郎(牡丹燈籠)」「不孝者」
・主人と奉公人 「帯久」「三味線栗毛」「甲府ぃ」
・市井の人々 「佃祭」「五百羅漢」「人情八百屋」「藪中の蕎麦」
・親と子 ①「抜け雀」「ねずみ」「三井の貸し傘」「薮入り」
「猫怪談」「文七元結」
②「笠と赤い風車」「浜野矩随」
③「火事息子」「子別れ」
・夫婦 「救いの腕」
・芸人 「高座の徳利」「揺れるとき」
やはり、「親と子」というパターンが多いかもしれません。
さらに、「父親と子(娘・息子)」「母親と息子」に分けられるでしょう。
上の①は、父親と息子あるいは娘、②は母親と息子、そして③は父母と息子「父性」と「母性」を語ることになります。
「父性」と「母性」ってどんなもので、どんな違いがあるのか?
「母性」は、無条件の愛情・やさしさ・保護ということでしょうか。
子のありのままを受け入れ、共感し、優しく守り癒してくれる。
一方で、「父性」というのは、無条件ではなく、“条件付きの愛情”という、厳しさを持ったもの。
「コレをしてはいけない!」「こうしなければならない!」といった、世の中の厳しさやルールやマナーなどを教える。
ある時は対立もして、子どもを導く。
・・・「火事息子」は、息子に対する、父親と母親の違い=父性と母性の違いを描くものにしようと思いました。
現代は、「母性」がやや勝っているのかもしれません。
物事を決めつけたり、ルールを優先したり、外聞やプライドを気にしたりする・・、父性はどうも旗色が悪い。
私は、この噺で、母親のストレートな愛情は分かりやすいので、父親の愛情を強めに描こうと思いました。
「もっと前へ出ろ!」は、「こんなに心配させて・・・バカヤロウ」という気持ちをベースに。
「(彫り物が)綺麗だね」の母親の一言には敵いませんが、本当は父親だって、本音を言って、泣きながら抱きしめたい。
でも、父性だから、それが出来ない・・・その気持ちを。
落語って、実によく出来ています。
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