高座の視線・・・
先日の「おひろめ寄席」の後、何人かの出演者の方から、質問や高座の感想を求められました。
師匠も含めて25人の高座を、舞台袖で聴かせていただきましたので、声をかけてくださったんでしょう。
とは言え、じっくり聴かせていただいた訳でもなく、客席から拝見した訳ではないので、正確なことは申し上げられませんが。
開演前に、出演者のお一人から、「いつもの発表会の会場と違って大きいから、視線をどこに置いていいか分からない」という質問を受けました。
私は、「会場の大小は気にしないで、自身の舞台設定・人物設定に合わせれば」と言いましたが、なかなかご理解いただけなかったようでした。
「上手はどこ、下手はどこと、ある程度の方向の目安は必要ですが、視線の先を固定しないで、その場面場面で自然な視線に心がけてください」と付け加えました。
そう「自然体で」と。
具体的に言えば、ご隠居さんと八っつぁんの会話では、2人が目を合わせる距離で会話をすれば良い訳です。
だから、恐らくご隠居は、下手を向いて、1~2メートル先にいる(はずの)八っつぁんを見て話しかける・・・、高座から1~2メートルの空間に焦点を合わせるということです。
地語りの場合も、自分で設定するということでしょう。
私は、落語で「自然体(自然に)」と言うのは、バーチャリティではなく、実はリアリティだと思っています。
師匠から落語を習っていて、中には、もっときめ細かく教えて欲しいと思っている方も少なからずいらっしゃると思います。
語り(喋り)方、仕草、視線、表情・・・・。
落語は、脚色、演出、小道具゜、大道具、演技・・、全て一人でやる演芸です。
演劇や講談、浪曲や朗読・・・とは、本質的に違います。
よく言えばフリーハンド、悪く言えば何もない。
自然な人間の感情や所作を、忠実に表現することだと思います。
そのためには、活字で覚えてはいけない。
稽古の時には「演読」が不可欠になるということです。
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