京須さんの思い
ソニーの「来福」レーベルで、朝日名人会のプロデュースをされている京須偕充さんの「落語みちの駅」から。
3月17日14時から第177回朝日名人会。
まずは二ツ目・柳家わさびさんで「佐々木政談」。
高座をおりてきた演者に思わず言ってしまいました。
「ありがとう」。
付け加えて「(朝日名人会18年で)いちばんウケた『佐々木政談』だった」。
この噺は“ほどのよさ”ゆえにそこそこ口演されていますが、派手でも突飛でもなく感動的でもありませんから、野心派の若手はあまり大事に考えてはいないようです。
今回の口演は当方からの持ちかけではなく、わさびさんの側からの言い出しでした。
朝日名人会でも過去にベテランから二ツ目まで数席の口演がありましたが、せいぜい穏
やかな佳演という相場にとどまっていました。
今回のわさび口演は、はっきりウケたのです。
べつに変わったアプローチをしたとか、大量のギャグを投入して破壊的成功をしたというわけでもないのです。
ただただ幼き主人公・四郎吉を型通りの子ども口調ではなく、いまの、どこにでもいるガキのように自然に、ただし個性的に表現しただけです。
トンチの怪物にしなかったこと。
これが最大の勝因だと思います。
こういうアプローチがあること。
そういう道に挑んでいる若手が健在だということ。
それがうれしくて、思わず「ありがとう」と言ったのでした。
ブーム以降、とかく前のめりの小うるさい高座が増大しているのを目撃するばかりで、中長期的危機の予感を持ち始めている老兵にとってはうれしい日となりました。
(以下略)
私は、この高座を聴いてはいませんが、京須さんのコメントに共鳴します。
プロでも、おこがましいですが素人でも「とかく前のめりの小うるさい高座が増大している」傾向を憂える一人ですから。
「変わったアプローチをする、大量のギャグを投入して破壊的成功をする」やり方が粋に感じないので。
「主人公を型通りの子ども口調ではなく、いまの、どこにでもいるガキのように自然に、ただし個性的に表現」することが素晴らしいと、聴いてはいませんが、そう思います。
そういう意味で、大変申し訳ないけれども、紀伊國屋寄席の「転失気」は、「変わったアプローチをし、大量のギャグを投入して破壊的にし、前のめりの小うるさい高座」だと思いましたから。
チャレンジとして、全否定はしませんが、私は引いてしまいます。
とても、聴かせる「話芸」だとは思えないから。
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