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2018年3月 3日 (土)

林家九蔵襲名?

そもそも、変則的な襲名で、素朴に問題はないのかなぁと思っていました。
林家九蔵襲名?
三遊亭好楽師匠の3番弟子で5月に真打昇進予定の「三遊亭好の助」さんが、好楽師匠がかつて名乗っていた「林家九蔵」を襲名するという話。
これが、どうやら白紙に戻ったという・・・。
2月に入って、「林家正蔵」さんが異議を唱えたそうです。
その結果、「林家九蔵」襲名を取りやめて、「三遊亭好の助」のまま真打に昇進することになったようです。
私も、個人的には、やはり無理がある襲名話だと思います。
そもそも、「林家九蔵」の名前は、好楽師匠が、「八代目林家正蔵(後の彦六)」師匠に入門して名乗った名前です。
そして、彦六師匠没後に、落語協会を出て「五代目三遊亭円楽」門下に移り、「三遊亭好楽」と改名した経緯があります。
好楽師匠は、好の助さんの真打昇進を機に、愛着のある前名(九蔵)を贈ることを決め、八代目正蔵(彦六)師匠のご遺族や、一門の兄弟子の「林家木久扇」師匠に相談し、了解を取り付けていたそうですが、もう一つ肝心な、現正蔵さん(海老名家)には、了解を取っていなかったということなのでしょうか。
2月に入って、襲名を知った正蔵さんと母親の海老名香葉子さんから“物言い”。
好楽師匠が根岸の海老名家に出向いて理解を求めたようですが、賛同してもらえなかったと。
正蔵さんは、「三遊亭に行かれたんだし、その一門で林家はおかしいでしょうというお話はしました。(落語)協会を出て行った方ですし、落語界で悪しき前例を作るのは良くないとは申し伝えました。名前を取り上げるとかそういうことは言っていません」と説明しているそうです。
噺家さんの名跡は、師匠と同じ亭号でない場合もあります。
例えば、柳家一門の噺家さんが柳亭とか、あるいは、立川、入船亭、鈴々舎なんて。
ところが、今回は、2点で複雑になっていると思います。
まずは、八代目林家正蔵一門は、元々、海老名家が持っている名跡を一代限りで借りたものであることです。
彦六師匠のお弟子さんは、そういう経緯もあり、林家一門とは言いながら、総領弟子は、林家照蔵改め春風亭柳朝を名乗りました。
従って、孫弟子の一朝師匠や小朝さん、さらに一之輔さんも、春風亭を名乗っています。
ただし、正雀師匠は、芝居噺の後継者でもあるからでしょう、林家を名乗っています。
それから、もう一点、好楽師匠は、正蔵さんが仰るとおり、彦六師匠亡き後は、落語協会と林家一門を離れて、円楽一門会に移籍している点です。
「九蔵」という名前は、名前は個人に属するとは言いながら、並行して落語協会の林家一門の名前だということが重要なポイントだと思います。
そもそも、林家でも、海老名家の林家と彦六師匠の林家とは、全く流れが違います。
海老名家とて、元々林家の本流ではないものの、二派を比べたら、やはり"本家(本流)"に近いと言えると思います。
極端な例ですが、「九蔵」を名乗ってもおかしくないのは、落語協会の正雀一門か、彦六一門の春風亭の噺家さんぐらいでしょう。
しかし、大変申し訳ありませんが、「九蔵」というのは、好楽師匠が初代で、落語界全体としては、それほど大きな名前ではありませんし、落語協会を出て行った方の名前ですから、進んで名乗る噺家さんはいない(少ない)と思います。
昨年、金原亭馬生一門の桂三木男さんが、五代目「桂三木助」を襲名して真打昇進しましたが、彼は、祖父と叔父が三木助を名乗っていたサラブレッドですから、前座名「金原亭駒春」から二つ目になる時に、桂の亭号を名乗りました。
好楽師匠の気持ちも分からないではありませんが、私は正蔵さんのスタンスが正しいと思います。

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