寄席のこと
先日の「千早亭落語会」の楽屋で、師匠から「正面を切る」とか視線の話をいただいた時、師匠が、「こういうものは、ホール落語のような場所ではなかなか身につけられない」というような趣旨のことを仰いました。
それを聞いた私は生意気にも、「師匠、やはり寄席というのは噺家さんに必要ですよね。芸を披露する場所としてだけではなく、ある意味では稽古の場所でもありますよね。以前、師匠が鈴本演芸場のお席亭と議論されたことも聞いたことがあります」なんて。
「寄席はネタ下ろしをするにも格好の場になるんだよ」と師匠。
「そう言えば、(師匠が三越劇場80周年で披露された)"三井の貸し傘"も、三越落語会で披露する当日の浅草演芸ホールの昼席で、まず"試運転"されてからお演りになったんですよね」
師匠ご自身も、かつて落語協会分裂騒動の時は、落語協会を脱退して戻るまでの2年ぐらいは、寄席に出られなかったご経験がありますから。
さらに生意気にも「今、寄席に出られず、ホール落語を中心に活動している団体や噺家さんがいて、それなりに人気のある噺家さんも大勢いますが、私から見て、寄席に出ていない分、落語が雑だと思います。文楽師匠の仕草が丁寧で綺麗だったのは、寄席だけでなく、お座敷で鍛えられたんでしょうか?」
「そうかもしれないね」
単なる場所、スペースだと言うなら、ホールでも小劇場でも、落語を演ることは出来ますが、その根本や素地や了見を作るのに、師弟関係や寄席というのは、時代を越えて不可欠なものだと思います。
そう言えば、師匠の総領弟子の吉窓師匠のところに入門して見習いだった小吉さんが、寄席の楽屋入りが許され、いよいよ今月から前座修行を始めているはずで、先月の稽古の時、師匠に「おめでとうございます」と申し上げたら、嬉しそうな顔をされていました。
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