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2017年8月25日 (金)

落語の上下(かみしも)

舞台と高座の後は、上下(かみしも)の話。
一人で複数の人物を表現するのに、右を向いたり左を向いたりして台詞を喋ったり仕草をしたりしますが、これを「上下をつける」「上下を切る」「上下をふる」などと言います。
お客さまの頭の中に像を作ってもらわないといけませんから、これがしっかりできないと、誰が喋っているのか、何がどうなっているのかがわからなくなってしまいます。
客席から向かって右方が上手(かみて)、左方が下手(しもて)。
これは芝居の舞台と同じで、花道がある方が下手、座敷のある方が上手になります。
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このルールが理解できていれば、基本的に上下は難しいものではありません。
顔を下手に向ければ上位の人、上手へ向ければ下位の人物ということになる訳です。
この"上下関係"は、階級差、年齢順、性別、裕福度、場面の位置関係などで決まりますが、これに仕草がつけば、それぞれの人物描写が出来るということです。
時々、上位の人は必ず上手だと思い込んでいる人がいますが、そんなことはありません。
例えば、長屋に、住人より上位の者が訪問してきた場合(八五郎の家に大家さんがやって来る場面)では、はじめは大家さんが下手から来意を告げ、上手にいる下位の者が 「どうぞ」と促して、顔を下手から上手にまわし「よくいらっしゃいました」と言い、下手へ向き直って訪問者がしゃべり、これで訪問者が上座に座ったことになります。
この立体感が表現できれば、あとは応用ということです。
http://ranshi2.way-nifty.com/blog/2012/10/post-7428.html
師匠に稽古をつけていただく場合、正面の壁に「上手」「地語り」「下手」の紙を貼ります。

だいたい、30度ぐらいの角度で上下を振る感じです。
ところが、多くの方は、その角度が大き過ぎるようです。
落語は、"リアリズム"と"リアリズムのウソ"が同居しています。
例えば、真後ろを向く仕草は、ほぼ真横あたりで表現しますから、上下の角度は360度ではなくて、せいぜい150~180度までということでしょう。
リアリズムのウソというのは、テレビや舞台のホームドラマの食事のシーンが典型的かもしれません。
卓袱台(古い)の正面には、人は座りません。
見る側にお尻を向けることはしません。
それと同じように、座って演るゆえの制約がありますから。
上下の角度を小さめにして、仕草や目の動きで表現することにより、大勢の登場人物を表現することが出来ます。
三次元、3Dの演出が出来るということです。
落語は、テレビ放送に向かないと言われます。
というのは、基本的には、一方向(正面)の固定カメラだけでないと混乱するからです。
となると、映像は単調になりますから。
時々、カメラを客席の両脇と正面に置いて、演者が上下をつけるたびにカメラを切り替える撮り方をしていますが、あれでは折角の上下の味が消えてしまうどころか、訳がわからなくなってしまいます。

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