歌丸師匠の牡丹燈籠
病後間もない歌丸師匠、国立演芸場8月中席で、恒例の三遊亭圓朝もの。
14日には81歳の誕生日を迎えたそうです。
今年前半は肺炎などのため入退院を繰り返し、必ずしも体調が万全ではない中、1日おきのトリとなったが、「語り直して牡丹灯籠『お露新三郎 出逢い』」をじっくりと。
「お札はがし」や「栗橋宿」のくだりがよく知られるが、全部を通すと孝助の敵討ちを軸に、因縁が絡み合う複雑なドラマとなっている長編噺。
歌丸が今回語ったのは、その発端となる「本郷刀屋」から、お露と新三郎の出会いまで。
湯島天神の祭礼の日、刀屋で刀を吟味していた飯島平太郎(のち平左衛門)が、酔って供の者に絡んできた黒川孝蔵を斬り殺す。
その平左衛門の娘お露は医者の山本志丈の紹介で萩原新三郎と出会い、互いに一目ぼれする。
歌丸は明瞭で歯切れのよい口跡。
刀屋での騒動は緊迫感があり、お露と新三郎という美男美女の出会いはユーモアを交えて笑わせ、噺の緩急をうまくつける。
お露に「ポッと胸の中に灯がともります」という一言にも情があるのは、語り部として歌丸の真骨頂だろう。
お露のことを思い、悶々とする新三郎と店子の伴蔵が釣りに出かける場面は三味線と鳴り物の下座が入り情緒たっぷり。
櫓でこぐ形もきれいに決まった。
酸素吸入器を付けながらではあるが、観客をぐいぐいと引き込む熱演。
4月の国立では「小間物屋政談」を語りたいという意欲も見せ、これも楽しみである。
・・・私の牡丹燈籠は、お露と新三郎のところだけですが。
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