江戸落語と上方落語
東京と大阪、江戸と上方では、同じ落語でも生い立ちが全く異なります。
単に、江戸弁と上方弁の違いではありません。
こんな説明があります。
江戸落語は、幕府の御膝元であり、侍が大半を占めた江戸に生まれたものです。
趣味人の楽しみであるお座敷芸として発展していきました。
三遊亭圓朝などによって人情噺が多く作られたことも特徴のひとつです。
一方、上方落語は商人の町として栄えた大坂(大阪)や悠久の都、京都で生まれ、長く屋外で演じられました。
そのため、聴く気のない客の足を止めて聴かせる必要があり、見台をたたいたり、ハメモノ(三味線、太鼓などの楽器演奏)入りなどを演じたりと賑やかで陽気で派手な演出が好まれました。
旅ネタと呼ばれるスケッチ落語が多いなど特色があります。
・・・わかりやすい説明です。
簡単に言えば、江戸落語は「お座敷芸」、上方落語は「大道芸」。
お座敷では、そもそもお客さんは聴く意思がありますから、もともと聴く意思もない通りすがりの人に語り込む大道芸にくらべたら、導入部分の努力は少なく、楽かもしれません。
しかし、座敷の狭い空間で、鑑賞する意思のある(場合によっては通の)お客さんを唸らせる必要がありますから、細かな演出や語りには、相応の技量が必要になります。
江戸落語には、黒門町の桂文楽師匠のように、練りに練って、無駄な言葉を削ぎ落とした粋な演出が求められ、上方落語では、桂枝雀師匠のように、とにかく目立って人にこちらを向かせるコテコテの演出が求められます。
江戸落語は、いわば省略の美、上方落語はボキャブラリーや表現の多様さの美かもしれません。
従って、元々は上方の噺だったのを江戸に持って来た噺が数多くありますが、ただ言葉と地名を変えるだけでは駄目。
市井に暮らす人々のメンタリティに合わせて翻案しないと、受け入れてもらえなくなります。
調味料なら醤油とソース、ラーメンなら醤油と豚骨、コーヒーならアメリカンとエスプレッソ、しゃぶしゃぶならポン酢と胡麻ダレ?
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