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2017年4月30日 (日)

本当に落語ブーム?

pen立川談四楼師匠が、日本経済新聞に寄稿されています。
題して「本当に落語ブーム?」。
落語ブームであるという。
「ブームと言うのはよそうや。ブームは去るものだからさ」。
この消極的とも思える某落語家の意見もブームを意識してのもので、してみると“ブームの兆し”ぐらいはあるのかもしれません。
ブームをどう捉えるかですが、真打はもちろん、若手の二つ目、果ては末端の前座までが引く手あまたで忙しい。
それをブームと言うのだと思いますが、その伝でいくとブームではないとの実態が浮かび上がります。
そうです、ちょっと偏ったブームなのですね。一部の落語家が忙しいのです。
「富の偏在」との言葉がしっくりくるように。
ということは「オレはヒマだぞ」と声高らかに宣言する落語家が数多く存在するということでもあるのです。
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東京の落語家はざっと五百人、何とそのうち三百人以上が真打です。
そうです、典型的な逆ピラミッドで、その競争率は高く、仕事の奪い合いは熾烈を極めます。
結果、高座にあぶれる真打が続出し、「どこがブームなんだ?」となるわけです。
かつて真打になることが目標という時代がありました。
真打になれば安泰と言われたものなのです。
いや大変な時代がやってきたものです。
何しろ石を投げりゃ真打に当たると言われているのですから。
その分、若き二つ目が大いに張り切っています。
“二つ目貧乏”という言葉があるくらいで、最も恵まれない存在、かつてはそれが二つ目でした。
落語会や寄席は、客を呼ぶであろう真打と労働力として欠かせない前座で構成され、二つ目に高座は滅多に与えられず、故に二つ目貧乏と言われたのです。
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そんな二つ目がなぜ張り切るのか? 
私はその理由が“地域寄席”にあると考えます。
ご存じでしょうか地域寄席を。
地域寄席とは定席以外の落語会を指します。
浅草演芸ホール、鈴本演芸場、新宿末広亭、池袋演芸場といった、毎日営業している寄
席を定席といい、それ以外を地域寄席と称するのです。
近年、この地域寄席がめっきり増えました。
お寺の本堂、神社の参集殿、蕎麦屋、寿司屋、居酒屋、公民館、果ては民家まで。
落語はお客さえ集まれば場所を選ばないのです。
東京には落語家の組織が四つあります。
落語協会、落語芸術協会、円楽一門会、立川流です。
円楽一門会と私の所属する立川流はいわゆる定席には出られません。
それぞれ落語協会から脱退した経緯があるからです。
ですから円楽一門会と立川流は高座獲得のために地域寄席を目指すしかなかったのです。

落語ブームのラの字もない頃でした。
しかしやるしかないのです。
どこでも出かけました。
まさかここまでやってきた芸人はいないだろうと思ったら、楽屋のネタ帳に永六輔氏と小沢昭一氏の名前があって驚きましたっけ。
そこへ落語協会と落語芸術協会の二つ目が参入します。
目を付けないはずがないのです。
二つ目貧乏の人達なのですから。
更に真打も参入します。
これも納得です。
とにかく人数が多く、定席からあぶれた人達が危機感を持ってほとんど乱入したのです。
腕は確かですから、これ盛り上がりますよね。
落語や落語を扱ったドラマやコミックスがこれを後押しします。
更に近年の大きな特徴はSNSの利用でしょう。
多くの落語家がツイッターやフェイスブック等をやり、地域寄席の情報を日々発信しているのです。
かつてはハガキで案内を出し、チケットは手売りでした。
この辺は隔世の感があるとしみじみしてしまいます。
演芸専門の月刊誌に「東京かわら版」があります。
三年ほど前までは掲載される地域寄席の月間公演数は約五〇〇でした。
それがどうでしょう。
今や優に一〇〇〇を超えるのです。
しかもこれは首都圏における数字で、二つ目や若手真打がいかに活動しているかの証左なのです。
「私の地方に来て」という声があります。
私らにももっと全国へとの思いがあります。
しかしここにアゴ、アシ、マクラが立ち塞がります。
アゴは顎で食事代、アシは足で交通費、マクラは枕で宿泊代で、地方の地域寄席はここがツラいのです。
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しかし頑張る地方の席亭もいます。
落語好きの幹事を十人集め、それぞれに二十枚のチケットを売ってもらい、二百人規模の地方寄席を軌道に乗せている例が少なからずあるのです。
ギリギリでしょう。
いや多少の持ち出しかもしれません。
それが分かるから落語家も熱演します。
そして打ち上げでは楽しき落語談義となるのです。
実は地域寄席に関わると、苦労が多いのです。
ポスターを作り、チラシを配布し、頭を下げてチケットを売り、当日ともなると会場の設営に始まり、受付、案内、楽屋の接待と天手古舞(てんてこまい)。
その間に落語家を駅で迎えたりするのです。
つまり好きな落語を聞いていられないのが実状で、そこで落語家が帰ってしまったら、それこそ骨折り損の草臥(くたび)れ儲(もう)けで、ガッカリです。
しかし泊まってもらうには経費が……。
皆さんそこで苦労しているのです。
しかしそれを実現させるのは快感だそうです。
地域寄席に限っては落語ブームといえるでしょうが、現在は飽和状態、やがて淘汰があり、しっかりした経営のところが残るでしょう。
そこで「あなたも席亭になりませんか」とのお勧めなのです。
いい道楽だと思いますよ。

・・・ブームって本当?という答えかどうか分かりませんが、落語が東京(江戸)や大阪だけで聴くものではなくなって来ていることは確かかもしれません。
私の地元に近い山梨県富士川(旧鰍沢)町は、落語「鰍沢」で町興しをしています。
宝くじにでも当たったら、「席亭」をやってみたいですねぇ・・・。

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