落語DEデート
珍しい噺でした。
◇ふたなり 五代目古今亭志ん生
ある田舎のお話。
土地の親分で、面倒見がよいので有名な亀右衛門のところに、猟師が二人泣きついてくる。
五両の借金が返せないので、夜逃げをしなければならないという。
何でも呑み込む(頼みを引き受ける)ため、鰐鮫(わにざめ)と異名を取っている手前、なんとかしてやると請け負ったものの、亀右衛門にも金はない。
そこで、妖怪が出ると噂の高い天神の森を通って小松原のおかんこ婆という高利貸しのところへ借金に行くことになった。
森に差しかかると、ふいに若い女に声をかけられる。
どうせ狐か狸だろうと思ったが、これがなかなかいい女なので、話を聞いてみると「若気の至りで男と道ならないことをした、連れて逃げてもらおうと思ったが、薄情にも男は行方をくらましてしまい、この上は死ぬより他はないから、書き置きを親許に届けてほしい」との願い。
「もし聞き届けてくださるのなら、死ぬ身にお金は必要なし、持ち出した十両があるので、それを差し上げます」
こんなおいしい話はない。
亀右衛門はたちまち飛びついた。
「もう一つお願いがございます」
「何だい」
「あんまり急いだので、死ぬ用意が有りません。
ここは飛び込む川もなし、どうしたら死ねるか、教えてください」
そこで、目についたのが目の前の松の木。
亀右衛門、首くくりの実技指導をしているうちに、熱が入りすぎて、縄から思わず手を放したのが運の尽き。
自分がぶら下がってしまい、あえない最期。
「あァらいやだわ、この人。あたし、なんだか死ぬのが嫌になっちゃった。死人にお金は必要ないから、今この人に渡した十両、また返してもらおう」
ひどい奴があるもので、風を食らって逃げてしまった。
翌朝、親分の帰りが遅いのを心配した例の猟師二人が捜しに来て、哀れにもぶらぶら揺れている亀右衛門の死骸を発見して大騒ぎ。
さっそく、役人のお取調べとなる。
「ここに書き置きがあるな。覚悟の自殺と見える。どれどれ『ご両親さまに、先立つ不幸、かえりみず、かの人と深く言い交わし、ひと夜、ふた夜、三夜となり、ついにお腹に子を宿し…』。なんじゃ、これは。これこれ、その方ども、この者は男子か女子か、いずれじゃ」
「へえ、猟師(両子)でございます」
・・・志ん生師匠と米朝師匠しか演らなかったという噺。
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