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2016年9月 1日 (木)

若手落語家

memo毎日新聞の記事を見つけました。
◇魅力満載、若手落語家が熱い 満員御礼、
    修業耐えやっと二ツ目/食えなくても充実◇

「若手ブームだ」「イケメンだ」と落語界が注目されている。どうやら最近、多様な若者たちが落語に挑み始めているらしい。厳しい師弟関係も長い下積み生活もなんのその。
なぜ今、若人は落語家を目指すのか?
「ざーくざくのばーりばり。ちんちろりんのさーくさく」。
入門から9年目、「真打ち」一歩手前の「二ツ目」の入船亭小辰さん(32)が、古典落語「たらちね」を演じている。
長屋の八つぁんが新妻を待ちながら、仲むつまじい夫婦の食事を想像し、一人でほくそえむ場面。
次第に興奮する「八つぁん」の盛り上がりっぷりについ笑いが漏れる。
ここは東京・神保町の「らくごカフェ」。
昼間は喫茶店、夜は落語が聴ける。
常設の寄席より高座への距離が近い上、お値段も安く、初心者でも立ち寄りやすいと好評だ。
今夜も30脚の椅子は満席。
生まれて初めて生の落語を聴いた女性会社員(34)は「効果音もBGMもないのに言葉だけで世界を作るなんてすごい!」とすっかり感動している。
高座から降りてきた小辰さんに女性客の感想を伝えると「すごいのはお客さんの方です。僕は『絵を見せたい』と一生懸命言葉を伝えるだけ。言葉から情景を生き生きと頭に描いてくださるのはお客さんの想像力ですから」。
小辰さん、あくまで腰が低い。
最近の落語ブームの火付け役は一昨年、東京・渋谷に若手をメインに据えた定例会「
渋谷らくご」(通称・シブラク)が登場したことだろう。
「若者の街に落語が!」とメディアがこぞって取り上げた。
それまでも、2005年のテレビドラマ「タイガー&ドラゴン」や07?08年のNHK連続テレビ小説「ちりとてちん」、10~16年に連載され、テレビアニメ化された漫画「昭和元禄落語心中」など、若手落語家に光が当たる機会が増えていた。
実際に落語家の数も増えており、東西合わせると800人を突破。
史上最多と言われている。
落語家の増加は、定年がないことに加え、若手の弟子入りが増えたためだ。
若手が芸を磨ける高座を増やそうと、音楽で言えばライブハウスのような場所が増え始めた。
草分け的存在の「らくごカフェ」がオープンしたのが08年。
14年には昼間に500円で3人の噺(はなし)を聴ける二ツ目専門の寄席「神田連雀亭」が誕生。
一方、定席の新宿末広亭でも以前から毎週土曜日夜、500円で若手ばかり4人の「深夜寄席」が開
かれてきた。かつては空席が目立ったが、最近は立ち見も出る人気だ。
らくごカフェ代表の青木伸広さん(46)は「若手の落語を安く気軽に聴ける場所が増え、新たなファン層を呼び込んだ。
イケメンブームもその一現象。
すべてのきっかけは若手が落語界を目指し始めたことにある」と指摘する。
でも、なぜ若者は落語家を目指すのか。
真打ちまで十数年かかる上、本業だけで食えるのはほんの上澄みだけという厳しい世界なのに。
「シャープが台湾の会社に買収される不確かな時代です。しかも就職活動しても入りたい会社に入れるわけじゃない。望まない会社で自分をすり減らすくらいなら、食えなくても思い切って好きなことに打ち込みたい、と思う真面目な若者が増えているのです」と若手落語家をよく知る青木さんは分析する。
さらに徒弟制度についても「修業が厳しいのは、師匠がそれだけ親身に真剣に弟子の面倒をみようとするから。ここまで手を抜かず一生懸命育ててくれる『会社』が今どきありますか?」。
今や新卒社員の3人に1人が3年以内に離職するというのに、「落語界の若手は驚くほど辞めないですよ」と青木さん。
実際に本人たちにも尋ねてみた。IT企業を辞めて27歳で弟子入りしたのは女性落語家の三遊亭美るくさん(36)。
「(お酒を)飲む、(ばくちを)打つ、(女を)買う」のネタが多く、女性には向かないと言われてきたが、女性落語家も今では「知っているだけでも関東で25人くらいいる」という。
IT企業のギスギスした雰囲気や毎日終電帰りの激務に疲れていた時、友人が寄席に誘ってくれた。
生まれて初めて聞いた落語に夢中に。
半年後、当時は数少なかった女性落語家の三遊亭歌る多師匠の落語を聴き、感動。
退職して退路を断ってから、歌る多師匠に弟子入り志願した。
「女の仕事じゃない。やめとけ」と断られても食い下がった。
好きだから挑戦したかった。
前座時代、客から「女は引っ込め」とやじを飛ばされた。
でも「これが一生の仕事」という。
落語の世界は「みな家族みたい」。
幼い頃から母がおらず、父も前座時代に亡くした美るくさんに、師匠は「私を母親と思っていいから」と言ってくれたという。
もう一人、「お笑い芸人」から27歳で転身したのは、三遊亭とむさん(32)。
15歳でデビューし、テレビやラジオで「末高斗夢」として活躍したが、20代半ばで仕事がぱたりと来なくなった。
活路を見いだした先が落語だった。
生き馬の目を抜くようなドライな「お笑い」の世界を知る身には、落語界は「過保護」にすら思える。
「落語界はどんな偉い師匠でも全員が同じ厳しい前座修業を経験している。だから絆が強い。師匠が教え、守ってくれる。先輩方が援護射撃してくれるシステムがある」
修業の厳しさを知らぬまま「落語家になりたい」ととむさんに相談する芸人もいるという。「『お笑い』が短距離走の笑いなら落語はマラソンの笑い。『お笑い』の刺激的な笑いを見て育った若いお客さんに落語の魅力をもっと伝えたい」と奮闘中だ。
青木さんは「時代が落語を求めている」と見る。
「落語はちょっと元気がない時に聴くのがいい。なぜなら、落語の主人公は失敗してばかり。でも長屋のコミュニティーで村八分に遭うことはない。立川談志師匠は『落語とは人間の業の肯定』とおっしゃいました。落語の人気が低迷したのは高度成長期とバブルの1980年代。絶好調の時、人は落語を求めない。今のブームは不透明で先行き不安な時代ゆえではないでしょうか」
では、若手を支えるファンたちの心情は?
小辰さんの噺を聴いていたファン歴25年の女性は「真打ち前の二ツ目を聴くのが一番楽しい」ときっぱり。
「私が目をつけた子は将来大抵売れるの。的中率90%かな」
二ツ目を好んで見にくる古くからの男性ファンから、青木さんはこんな言葉を聞いたことがあるという。
「(柳家)小三治師匠みたいに完璧なエンターテインメントではなく、ドキュメンタリーを見に来てんだ。大リーグじゃなく甲子園。頑張っても失敗する日もあれば、ホームランをかっ飛ばす日もある。二ツ目の落語には、そんな面白さがある」。
なるほど、だから、つい応援したくなるのか。
多様な若手がしのぎを削る落語界の「ドキュメンタリー」には、名人たちの人情噺のように、“泣き笑い”のドラマがたっぷり詰まっている。

・・・・なるほど。
その通りのような、ちょっと違うような。

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