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2015年12月27日 (日)

越児さん

crying「鬼の涙」もなかなかいい噺です。
越児さん
越児さんは、実在しない生き物の噺と言えば、「天狗裁き」もお演りになっています。
この噺は、清水一朗という人の原作に、師匠が脚色をくわえたものだそうです。
彦六の正蔵師匠も、ご自身の演出でお演りになっていたそうです。
人間を、人間以外の鬼の視点から見ると、こんな風に見えるということで、とても示唆に富む内容でもあります。
越児さんが、鮮やかに完成されるのを楽しみにしています。
「鬼の涙」
節分の夜、女房のお福は金を借りに歩いたが、駄目で、ほうぼうの家々で蒔いた豆を拾いながら帰宅。
亭主の舛造も金策に歩いたがままならず。やはり豆を拾って帰ってきた。
そこで「もっと、豆を拾い集めて食料にしよう」と、舛蔵は出かけるが、すぐ、赤ん坊を拾って戻ってくる。
子供のない夫婦にとって、神様の恵みかもしれぬと大喜び。
しかし、嬉しそうにキャッキャと笑う赤ん坊だが、顔と言わず、手足と言わず、体まで異様に赤い。
それに、頭には小さな角があった。
「鬼の赤ん坊だ」
「どうする」
「見せ物に出そう」
「可哀そうだよ」
夫婦で話し合っていると、戸を叩く音。
とりあえず、人に知れてはまずいと、赤ん坊を押し入れに隠して、戸を開ける。
と、立っているのは鬼の夫婦。
名を鬼吉、お牙という。
「親子三人で江戸見物。豆をぶつけられて、逃げるとき、女房が赤ん坊を落としてし
まいました。捜してましたら確か、こちらから赤ん坊の声が…」
亭主は「知らぬ」と突っぱねる。
空っとぼけて「今頃はどこかで見せ物になっていることだろう」。
すると、鬼の親は「赤ん坊が見せ物になっていたとしたら、あたし達も見せ物になって、赤ん坊のそばで暮らします」と、悲しく言う。
そして、鬼は語り始めた。
「鬼には先祖からの言い伝えがあります。大昔、人と鬼は仲良く暮らしていたんです。人には智恵と夢があり、鬼には力と勇気がありました。
天下を取った人間が、弱い人をいじめるようになりました。
それに立ち向かったのが鬼なんです。
天下人は「鬼は人間の敵だ」と絶叫しはじめたんです。
鬼は追われ追;われて、島へ逃げました…。
人間はそこを鬼が島と名付けたんです…。
でも、われわれ鬼は人間を恨みませんでした。
大昔のように、仲良くしたいと願い、話し合いに節分にやってくるんですが、相変わらず豆をぶつけるだけで、話を聞こうともしてくれません…。
今日、こうして人と話をしたのは、生まれてはじめてなんです…」
舛造夫婦は、この鬼の親子の情に負けて、赤ん坊を返してやる。
鬼の夫婦はわが子(お角)を抱きしめ、大泣きに泣く。
鬼の目から溢れた涙は、土間いっぱいになり、ついには、下駄まで浮かしてしまうほどの量になってしまった。
こいつは大変と、亭主が鬼の夫婦の耳元でなにやら言うと、鬼は急にゲラゲラ笑い出し、涙も止まり、そのまま笑いながら帰っていった。
やっと、土間の涙も引き、一安心。
女房が亭主に訊いた。
「おまえさん。鬼になにを言ったんだい?」
「なぁに、来年の話さ」

・・・こんなオチも、いずれ分からなくなるのかもしれません。

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