猫怪談
「猫怪談」では、夜中に遺体を深川蛤町から谷中の瑞輪寺まで運ぶという設定になっています。
現在の門前仲町、「深川三流亭」の会場の近くです。
ここを、大家さんと半ちゃんと与太郎の3人が、亡くなった与太郎のお父っつぁんを菜漬けの樽に入れて担ぎ出したのが、四つ(午後10時頃)。
現在の道で考えると、永代通りを西に歩き、大川を渡って、日本橋を右に曲がり、中央通り(御成街道)を北上します。
上野、いとう松坂に差しかかったのが、もう12時、当時の九つ。
そこを右に曲がって、三橋、池之端にかかり、七軒町を通って谷中に抜けるのが近道です。
池之端あたりで、与太郎が樽をバラバラにしてしまいます・・・。
師匠の高座本には、お父っつぁんと与太郎が可愛がっていた「タマ」という猫が登場します。
与太郎は、そのタマが、お父っつぁんが亡くなると姿が見えなくなったのを気にします。
しかし、大家さんは、「タマは利口な猫だから、お父っつぁんが亡くなったので、遠くに行ったんだ」と言います。
何故なら、猫は魔物で化けるからと言う。
そう、猫はその生態から、非常に俗信の多い動物です。
人間の身近で生活する一方で、野性の本能を残し犬ほどの従順さは見られず、いつでも勝手気まま…。
夜にその目は怪しく光り、背中からは火花を発し(原因は冬の乾燥した日の静電気) 、 時にあり得ない声で鳴き(さかりの季節)・・・。
昔の人にとって、猫はまさに「化物」に限りなく近い生き物だったようです。
そこで、猫にまつわる俗信が色々言われます。
猫が死体・棺桶の上に乗る(跨ぐ・飛び越える・渡る)などすると、死人が起き上がる・立って歩く・踊り立つ・・・・等々。
その魔除けのために、遺体の上に刃物を置くなんてことがあるそうですが、与太郎さんは、お父っつぁんの懐に、猫が大好きな「まただび」を入れる・・・。
このあたりが、師匠が再編したストーリーのオチの仕込みにもなるのですが・・・。
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