落語 みちの駅「不死鳥・歌丸さん」
京須偕充さんが、「来福」というサイトに書き下ろし連載している「落語 みちの駅」の第5回が更新されていました。
今回は国立演芸場八月中席から復帰した桂歌丸師匠を採り上げていました。
http://www.110107.com/mob/news/diarKijiShw.php?site=OTONANO&ima=5530&id=603&cd=kyosu2&ct=regular
◆第5回 不死鳥・歌丸さん◆
八月十一日昼の国立演芸場は中席の初日で、この日から桂歌丸が十日間十一公演、トリで三遊亭圓朝作「怪談乳房榎」の長講をつとめる。
四月中席でも歌丸さんは十日間にわたってやはり圓朝作の「塩原多助一代記・あおの別れ」のネタ下ろし長講をやっているが、その後は入院しているほうが多い日々だったので、はたしてこの八月中席で元気なところを見せられるか否か、注目を集めていた。
結果を言えば、四月にまさる矍鑠とした高座ぶりだ。
四月の「塩原」では板付き、つまり幕を引いて高座への出入りの姿は見せなかった。
今回は板付きに加えて膝前に釈台を置いたから、一見は症状が一段進んだことになるが、これは入院が長引いて脚部の筋肉がいっそう薄くなり、正座を一時間も続けては痛くてたまらないためだという。
座り方より大切なポイントは声の力と間のリズムだ。芯に体力があり、表現意欲旺盛にして頭脳明晰であれば、噺家は張りのある調子で淀みなく噺を進め、客席を惹きつけることができる。
開口から一分間ほどは声が堅かったが、たちまち調子を回復して六十五分間、少しの乱れも滞りもなかった。
ネタ下ろしの「塩原」とちがい、長年手塩にかけた「乳房榎」なので余裕があったのだろうが、堂々大真打ここにありの名高座だった。
七十代後半の年齢でこれほどの意欲的口演を続ける噺家は往年の六代目三遊亭圓生以外に知らない。
歌丸さんは型でしゃべっているからできるんだ、と軽視したがる同業者もあるが、型を崩さず、そこに生命を吹き込むのはそれ自体が至難の業だ。
自分のキャラクターを軸にして人気を得るのももう一つ至難の業にはちがいないが、老いて、また患って崩れが生じたとき、キャラクター派は無残な姿になりがちだ。型派は息のある限り芸を保つことができる。
不死鳥・桂歌丸の回復をまずは讃えたい。
プロの評論家が絶賛するのですから、素晴らしい高座なんだと思います。
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