桂歌丸師匠の記事
朝日新聞の夕刊の記事です。
精力的な桂歌丸師匠のインタビュー記事です。
「緊張していますよ」。
東京・三宅 坂の国立演芸場。
4月中席の10日間の初日。
三遊亭円朝作「塩原多助一代記」 の「青(青馬)の別れ」をネタおろしする落語家桂歌丸は、高座にあがる2時間 ほど前に楽屋入りした。
本番30分前。
楽屋をのぞくと、下を向いて集中している。
暗唱しているのだろう。
口元が動 く。
あたしはね、円朝の長編噺を高座にかけることに取り組んでいます。
1996年から国立演芸場や横浜にぎわい座で「真景累ケ淵」と「怪談牡丹灯籠」を何年もかけて通し上演を しました。
円朝ものは複雑で長く、因果応報、勧善懲悪になっています。
人間の業、欲深さの恐ろしさを描いているんですね。
初日の5日前。
「塩原多助は長いね」と歌丸は横浜での落語会の前、国立演芸場の担当者に話した。
「筋や場所が入り組んでいるのは覚悟していた。人物 の説明を省くと短くなるけど、分かりに くくなるなあ。いまだに悩んでいますよ」
円朝ものに取り組む時は五代目古今亭今輔師匠や、六代目三遊亭円生さん、八代目林家正蔵さんのCDを聞いたり、速記本を読んだりしてノートに万年筆で書き起こします。テープに吹き込み、何度も聞いて無駄な部分を削ったり、現代に通じる部分を入れたりして推敲します。
大変ですね。
「青の別れ」は公演の2カ月ほど前か ら自室で作業しています。期限が近づか ないとやらない性分なんですけど、頭を かきむしりながら覚えました。
初日の高座。
命を狙われた多助が愛馬の青と別れて江戸に向かう場面。
歌丸は「おめえも苦しいべぇ、勘弁してくん ろ」「止めるでねぇ。未練が残るべぇ や。止めるでねぇ」と振り絞るような声で多助を演じながら、青に着物の片袖を引きちぎられる様子を腕を後方に突っ張って見せた。
青はちぎった袖を口にく わえてポロポロ涙を流す。
青が多助の袖を引きちぎる場面は原作にはないんですよ。
あたしの演出です。
「怪談牡丹灯籠」でも、照明を使って光のホタルを飛ばしたり、幽霊のカランコロンの足音や川下りの場面で三味線の伴奏を入れたりしました。
雰囲気を味 わってもらいたいですね。
「塩原多助」はきついですね。
78歳 ですから、楽したいですよ。
だけど、偉大な先人の財産を継承したい一心でやっ ています。
「塩原多助一代記」は百姓多助が苦 労を経て炭屋となり成功する話。
「青の別れ」は16日の有楽町朝日ホールの 「朝日名人会」や7月1日の横浜にぎわ い座の「桂歌丸落語会」でも披露する。
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