子別れ
某新聞に、「春風亭一之輔」さんの高座評が載っていました。
世相が変われど、親子の情愛がギュッと凝縮された「子別れ」は強い普遍性を放つ。
春風亭一之輔の口演に、改めてそう感じた。
演じた「下」の部分は、別名「子は鎹(かすがい)」。
鎹とは、木材と木材をつなぎ合わせるコの字形のくぎのこと。
まさに古典落語と現代を結節する「鎹」の意気に満ちた一席となった。
7、8日に7公演開かれた毎日新聞落語会「渋谷に福来たるSPECIAL」初日のトリ。
酒と女におぼれた大工の熊さんと、その別れた妻と息子の亀ちゃん。
改心して酒を断った父が、亀ちゃんと3年ぶりに偶然再会したことから、家族がまた一つになる。
江戸から明治にかけて作られた古典の価値観や倫理観は、時として現代には違和がある。一之輔は自身の家族や弟子とのエピソードのマクラで笑いを取りながら、現代の親子、人間関係の機微を巧みに描出。
観客をすーっと「子別れ」の世界にたぐりよせる。
本題に入ると、母の近況を遠回しに尋ねる父と、父に鋭くつっこみを入れる、こまっしゃくれた亀ちゃんとのやりとりに精彩がある。
3年前と違い気前よく小遣いをくれる父に「人間って苦労するもんだな」。
子供を軸に、離れて暮らす父の思い、女手一つで厳しくも愛情深く育ててきた母の思いが縦横に絡み合う。
クールでパンチのある語り口は、情感と笑いがほどよく調和。
あっさりしながら、コクのある余韻に、演者の器の大きさを感じた。
・・・ふうぅ~ん、なるほど。
そんなに格好いいものなのでしょうかねぇ・・・。
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