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2015年2月12日 (木)

王子の狐

王子稲荷の狐は、昔から人を化かすことで有名だった。
ある男、王子稲荷に参詣した帰り道、一匹の狐が美女に化けるところを見かける。どうやらこれから人を化かそうという腹らしい。
250pxoji_inari_shrine_03そこで男、「ここはひとつ、化かされた振りをしてやれ」と、大胆にも狐に声をかけた。
「お玉ちゃん、俺だよ、熊だ。よければ、そこの店で食事でも」と知り合いのふりをすると、「あら熊さん、お久しぶり」とカモを見付けたと思った狐も合わせてくる。
かくして近くの料理屋・扇屋に上がり込んだ二人、油揚げならぬ天ぷらなどを注文し、差しつ差されつやっていると、狐のお玉ちゃんはすっかり酔いつぶれ、すやすやと眠ってしまった。そこで男、土産に卵焼きまで包ませ、「勘定は女が払う」と言い残すや、図々しい奴で狐を置いてさっさと帰ってしまう。
しばらくして、店の者に起こされたお玉ちゃん、男が帰ってしまったと聞いて驚いた。
びっくりしたあまり、耳がピンと立ち、尻尾がにゅっと生える始末。
正体露見に今度は店の者が驚いて狐を追いかけ回し、狐はほうほうの体で逃げ出した。
狐を化かした男、友人に吹聴するが「ひどいことをしたもんだ。狐は執念深いぞ」と脅かされ、青くなって翌日、王子まで詫びにやってくる。
巣穴とおぼしきあたりで遊んでいた子狐に「昨日は悪いことをした。謝っといてくれ」と手土産を言付けた。
穴の中では痛い目にあった母狐がうんうん唸っている。
子狐、「今、人間がきて、謝りながらこれを置いていった」と母狐に手土産を渡す。
警戒しながら開けてみると、中身は美味そうなぼた餅。
子狐「母ちゃん、美味しそうだよ。食べてもいいかい?」
母狐「いけないよ!馬の糞かもしれない」

・・・なかなか面白い噺です。
初代三遊亭圓右が上方噺の「高倉狐」を東京に移したものだと言われます。
人を化かすと言われる狐が逆に人に化かされる顛末を描いていますが、一種の考えオチでしょう。
噺の中に出て来る「扇屋」さんは、今でも卵焼きで有名です。

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