クライシスマネジメント
ただいまダイエッターの私には、食べられない物になってしまいましたが、カップ麺ではこのやきそばが一番好きですね。
ところが、インスタントカップやきそば「ペヤング」にゴキブリとみられる異物が混入していたということで、製造販売元は、「製造過程での混入の可能性は否定できない」として、当面の間、全工場での生産自粛と、全商品の販売休止をすることを発表しました。
さらに、現在自主回収の対象になっていない商品についても、安全上の問題はないとしつつも、回収することを決めたそうです。
「ご心配のお客様におかれましては、自主回収商品と同様に、弊社宛てにご返送くださいますようお願い申し上げます。後日商品代金をお送りさせて頂きます」と。
リコールによるメーカーの経済的な打撃は甚大だと思いますが、初動が遅れて傷口を大きくしてしまう企業が多い中で、「英断」だと言っても良いと思います。
今、アメリカを発端にして騒ぎになっているエアバッグメーカー、自動車メーカーの対応が後手に回っているを見るにつけても。
しかし、仮に、生産・売上がストップしても、しっかり問題を解決して再開すれば、消費者はこぞって買いに来るはず゜です。
人気製品に対する飢えと会社に対する信頼の相乗効果で、必ず復活すると思うし、消費者が支えてあげなければいけませんよ。
ぺヤングと言えば、小益時代の当代桂文楽師匠と立川志の輔さんがキャラクターでしたから、親しみもありますし、学生時代から親しんでいる味ですから、是非とも応援してあげなくてはいけません。
こういうクライシスコミュニケーションでは、失敗例ばかりですが、数少ない成功例として、以下の2件が比較的多く取り上げられているようです。
まずは、私も良く知っている「参天製薬」の事件です。
2000年6月、社長宛に「現金2000万円を払わない場合は異物を混入した目薬をばらまく」と書かれた脅迫文と共に、異物の入った目薬が添えて送られてきました。
会社側は即時に警察へ通報すると共に、出張中だった社長に連絡しすぐに社長は帰社しました。
実際に異物が入った目薬がばらまかれているのかは解らない状況ですが、同社はその日の夕方には対応チームを設立し、製品回収(リコール)に向けて動き出し、記者会見や告知の準備もしながら厚生省(現厚生労働省)にリコール決定を報告(翌日15時)、19時に社長自らが記者会見に臨み、事件の説明と目薬の回収を発表。
ウェブサイトは翌日に告知を掲載しています。
そしてその翌日の朝刊に商品回収の告知広告を掲載し、営業を中心としたスタッフ総動員体制で、薬局、薬店を訪問し、さらにその翌日には250万個と言われた全目薬を店頭から撤去し、同時に回収の状況も逐次ウェブサイトで発表し続けました。
そして事件発生から10日もしないうちに、異物を容易に混入できない新パッケージでの製造販売を発表しました。
この一連の流れは、リアルタイムで報道されたのを聞きましたので、感動すら覚えました。
こういうのが、「毅然とした態度」と言うのでしょう。
それからの私は、頻繁に使うものではありませんが、目薬は必ず参天製薬の製品に決めています。
それから、「ジョンソン・エンド・ジョンソン社」の事件です。
1982年9月に起きました。
これも異物混入事件でしたが、タイレノールと言う頭痛薬で、7人が死亡しました。
発覚したのは新聞社からの通報(諸説あり。公式HPでは新聞社からの情報と記載)でしたが、ジョンソン・エンド・ジョンソン社では直ちに(1時間後と言われている速さで)テレビ、ラジオなど当時のマスコミを通じ、製品の使用中止を国民に呼びかけ、自主回収、製造、販売も中止しました。
この件と参天製薬の事件は似ているようですが、大きく違うのは毒物(青酸カリ)で死者が実際に出ていること。そして当初、同社社長は「青酸カリは使用していない」と発表していましたが、その後一部使用が発覚し、これもまた直ちに「訂正会見」を行ったことです。
同社はその後も逐次報告をし続け、顧客の信頼を取り戻しました。
この事件はクライシスコミュニケーションの好事例として、現在まで語り継がれています。
経営者の危機管理意識と度量、組織の柔軟性が物を言うのだと思います。
正しく迅速に行えば、品質にこだわるリコールは市場獲得につながるということですね。
「文七元結」の左官の長兵衛も、パターンは違いますが、一脈通じるところがあるかもしれない。