ワン・ワールド・トレード・センタービル
13年前(2001年9月11日)に起こった、「米同時テロ」の跡地に建設された「ワン・ワールド・トレード・センター」ビルが開業。
ビルの高さは、米国が独立した年にちなんだ1776フィート(約541メートル)で、全米一高いビルになったそうです。
・・・あの日(日本ではあの夜)のことは、鮮明に覚えています。
仕事が終わって帰宅して、寛ぎながら、NHKの「プロジェクトX」を視聴していました。
この日は、 「白鷺舞え! 空前の解体工事」という、姫路城の「昭和の大修理」と呼ばれる解体修復がテーマでした。
世界でも有数の巨大木造建築、国宝・姫路城。
終戦後、倒壊寸前にまで荒廃していたこの城を救ったのは、8年間にわたって行われた解体修理である。
誇りと技をかけて、天下の名城をよみがえらせるために闘った男達の壮絶なドラマを描く。
・・というものです。
慶長14年(1609)年、城主池田輝政による築城後、初めて城を全面解体しての修理工事が昭和10年2月に開始された。
西の丸の建物から始まり、第2次世界大戦をはさんで実に30年もの間この昭和の大修理は行われた。
このうち一般に言われる「昭和の大修理」は昭和31年から39年までの間に行われた天守閣群工事のことを指す。
世界でも有数の巨大木造建築、国宝・姫路城。
だが、終戦後この姫路城の老朽化はひどく、大天守は傾き、屋根瓦は波を打つほどに傷んでいた。
構成するすべての木材が、激しい歪みや縮みを起こし原型をとどめていなかった。
まさに倒壊寸前なのである。
ここまでに荒廃していたこの城を救ったのは、昭和31年から8年間にわたって行われた解体修理である。
この工事は高さ46メートル、重量5700トンの天守閣を一材も残すことなくバラバラに解体して、一から組み直す。
プロジェクトは手探りの連続で前代未聞の難工事となった。
リーダーに指名されたのは定年間近、まじめ一途な文部技官。
「研究の鬼」と異名を取り、法隆寺五重塔を始め文化財研究者としては折り紙付の人にとっても、姫路城は経験したこともない巨大建築物だった。
ふるさとの城を救えと、地元の大工など100人が参加し、棟梁を務めたのは「播州一の宮大工」と謳われた人。
2人は、それぞれの経験と勘からミリ単位の攻防を繰り返した。
ときに戸惑い、ときに意地をぶつけ合った。
そんな中、大きな問題が発覚した。
城の要となる長さ25メートルの東西2本の大柱のうち西の大柱は内部が腐っていたのである。
この東西の大柱は東大柱が樅の一本材、西大柱は3階で二本継ぎされた栂材である。
共に根本径が1メートル、末径42センチの巨木である。
この西大柱を東大柱同様一本材に取り替えようと、長さ26メートル、末径60センチの檜材探しが始まった。
巨大な檜を求めて、加藤氏は日本中を歩き回る。
ところが見つからない。
いくら探してもこれだけ大きく、まっすぐな巨木はない。
そうしている時に救いの手があった。
城から十数キロ北にある兵庫県神埼郡市川町の笠形神社が神木の檜を使ってくれと言ってきた。
喜んだのもつかの間、長さは充分だが途中で若干の曲がりがある。
これでは使えない。また一からの巨木探しが始まった。
2年近くの歳月が過ぎ、肉体的にも精神的にもリミットいっぱいになった時、やっと岐阜県木曽谷国有林の中に求めたものが見つかる。
長さも、太さも、充分、曲がりもない。
しかし、搬出途中の事故で根元から16メートルのところで、まっぷたつに折れてしまう。
・・・・。
万策尽きたかと思われたプロジェクト最大の危機に、棟梁が起死回生の一言を発した。
「木を継ごう。」と。
棟梁は長い宮大工の経験からこの継ぎ手を考え出したのだ。
二本の木を巧みに継いで、しかも強度を損なわない手法である。
幸いにも折れた檜の上に笠形神社の檜を継げば、長さは充分。
プロジェクトに光明が差した。
城の復元にかける情熱と英知、誇りと技、城への愛着が道を開いていった。・・・そして姫路城は蘇った。
建物を支える柱の重要性と、日本の技術力の高さに改めて関心したところで、テレビの画面が切り替わりました。
放送終了と同時に、同時多発テロのニュースが入り、報道特別番組に切り替わったんです。
ちょうど、旅客機がビルに突っ込んで行く映像でした。
そして、アメリカの20世紀のシンボルである世界貿易センタービルが2棟とも破壊されたんです。
片方で全知全能をふるい、愛する城を守ろうとする人間がいれば、もう一方で身勝手ともいえる思想と私欲で平和文明を破壊しようとする者がいる。
人間の善と悪、両極端の本性をこの日見せつけられた気がした。
当時、こんなコメントがありましたが、全く同感でした。
姫路城には、建物全体を支える大柱があった。
世界貿易センタービルは、各階の躯体を積み上げて作られたものだと聞きました。
あの大柱の檜に支えられる白鷺城の勇姿と、崩落して行くビルのギャップが、物凄いインパクトでした。