女心と秋の空・・・?
月に関する和歌を探していると、あの時代のことですから、どうしても男女の恋の歌にぶつかります。
まずは、大伴家持の意味深な歌。
なかなかに 黙(もだ)もあらましを なにすとか
相見初めやむ 遂げざらましくに
こんな中途半端なことになるのだったら、いっそのことずっと黙っていればよかった。
どんなつもりで逢い始めたのだろう、所詮思いを遂げることなど出来はしないのに・・・。
男は辛い・・・。
大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ)という女性は、女心を歌っています。
それも、片思いの歌ばかりです。
思わじと 言いてしものを はねず色の
うつろひやすき 我が心かも
「あんな男のことなどもう決して思うまい」と口に出して言ってはみましたが、ハネズの色のように私の心はなんと変わりやすいのかしら、またあなたのことを思い出してしまいます。
恋ひ恋ひて 逢へる時だに うるはしき
言尽くしてよ 長くと思はば
ずっとずっと思い続けているのだから、やっと逢えた時ぐらい優しいこと言って欲しい。
少しでも長く一緒にいたいのなら・・・。
思へども 験も無しと 知るものを
何かここだく あが恋ひわたる
思ってもあの人は私に心を向けてくれないことは知っているのに、どうしてこれほどまでに私は長い間恋い慕い続けるのだろう。
黒髪に
白髪交じり
老ゆるまで
かかる恋には
いまだあはなくに
黒髪に白髪が交じり、年老いるまで、このような恋にはいまだかつて出遭ったことがありません。
山菅の 実成らぬことを 我に寄そり
言われし君は たれとか寝らむ
私との仲が実にならないことと噂されたあなた様は、どなたと寝ていらっしゃるのでしょうか。
大伴坂上郎女(生没年不詳)は、「万葉集」の代表的歌人です。
大伴安麻呂と石川内命婦の娘、大伴稲公の姉で、大伴旅人の異母妹、大伴家持の叔母で姑でもあるそうです。
「万葉集」には、長歌・短歌合わせて84首が収録され、額田王以後最大の女性歌人。
よく、「女心と秋の空・・・」なんてぇことを言います。
言うまでもなく、女性の移ろいやすい心を天候がかわりやすい秋空に喩えたものですが、実は、昔は「男心と秋の空」「男心と川の瀬は一夜にしてかわってしまう」という格言だったそうです。
女性は、こんなにしおらしいことを言っていても、ある一線に達すると、何事もなかったようにすっぱりと忘れることが出来るようですから、気をつけないといけません。
女性にイニシアティブが移ってしまった時代の変化の1つでしょう。
その点、男どもの女々しいことと言ったら・・・。
「覆水、盆にかえらず」というのも恋愛格言だと言われます。
「一度別れた二人は完全には元にもどらない」、「一度してしまった恋愛の失敗も完全に修復することはできない」ということでしょう。
受験英語の有名な格言を覚えています。
It is no use crying over spilt milk.
なんだか、訳の分からないことになってしまいました。
女性は、心根が優しくて、可愛い人がいいですね。
大原麗子さんが、ウイスキーのCMで言った台詞を思い出します。
「少し愛して、長ぁく愛して」・・・、あぁ、昭和は遠くなりにけり。