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2014年10月26日 (日)

妾馬

師匠は、この「妾馬」という題名が気に入らないと仰います。
「妾」という言葉の意味が・・ね。
それから、別名の「八五郎出世」というのも違和感があると。
主人公の八五郎は、侍になりたい(出世したい)とは全く望んでいないのだからと。
寝蔵師匠(越児さん)は、「同じ噺に複数の名前があるというのは、それぞれの名前に自信がない裏返しなんじゃないか」と仰います。
師匠は「長屋馬」という名前にして高座本を編集されたそうです。
http://ensou-rakugo.at.webry.info/201407/article_6.html
裏長屋に住んでいるが評判の器量良しの”お鶴”ちゃん、歳は十八の孝行娘。
たまたま御駕籠で通りかかった丸の内、赤井御門守が見初めて、城に上がるように言われて、200両の持参金を貰って奉公に上げたが、持ち付けない金を持った兄の大工”八五郎”は遊びほおけて家にも寄りつかない。
お鶴は殿様のお手がついて懐妊。
生まれたのがお世継ぎの男の子であったので、お鶴の方からお側室(へや)様と出世した。
この慶事に八五郎は殿様に招かれお屋敷に伺う事になったが、何一つ無い。
髪結い、銭湯の銭も大家さんに出して貰い、その上着物一式、羽織袴から褌 (したおび)まで借りて、着せて貰った。
がさつ者だから言葉使いには気を付けろ、特に言葉の頭には「御」最後には「奉る」を付け、丁寧に話をしろと注意をされる。
 
赤井御門守の屋敷に着いて、重役の田中三太夫に付いて部屋に通された。
言葉の行き違いで、どたまを下げろや、即答をぶてと言われ側頭をぶったり、殿様の言葉が分からずにいたり、丁寧すぎて自分の言っている事が分からず、無礼講で良いと言われた。
屋敷中、符丁で話しているから分からないと、職人言葉で話し始めた。
はらはらするのは三太夫さんだけ。
ササは食べるかと言われ、酒の事とわかって所望すると、酒肴がどっさり出てきた。
すっかりいい気持ちになって、改めて見ると殿様の隣にお鶴さんが着飾って座っていた。

母親が喜んで踊っているし、初孫なのでおしめを洗ってやりたいが身分も違うのでそれもかなわない。
と近況を話し、殿様にはお鶴をよろしくとお願い。
お鶴には子供が出来たからと自惚れてはおけないと、心から話聞かせた。
湿っぽくなったので、都々逸を一声聞かして、座を盛り上げた。
「おもしろい奴で有る。彼を抱えて使わせ。」鶴の一声で、八五郎出世というおめでたい話です。

・・・と、大抵の噺家さんが演るのはここまです。
これだと、「八五郎出世」は分かりますが、何故「妾馬」なのかは分かりません。
そこで、この後を追いかけてみると・・・。

士分に取り立てられた八五郎は、名を改めて”石垣杢蔵左衛門蟹成”(いしがき もくぞうざえもん かになり)となった。
ある時、使者の役を仰せつかり馬に乗って出かけた。
もとより馬術など知らないのでこわごわ乗っていたが、そのうち馬が駆けだしてしまった。止める事も知らず、ただ鞍にしがみついていたが運良く家中の者が通りかかり、止めてくれた。
「これはこれは、石垣氏、早馬でいずこへ参られる」
「馬が知っておりましょう」。
・・・
と言うことで、「妾馬」の由来が分かります。
オチの「馬が知っておりましょう」は、「前に回って鰻に聞いてくれ」という「素人鰻」のオチと同じパターンです。
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さて、実はさらに後編があるそうで・・・。
八五郎、この士分の堅っくるしさに閉口して、武士をやめて職人に戻ってしまった。
殿様から拝領したお金を元に、職人衆も増やし女房も迎えた。
がさつさは別にして、元来正直者でいい男だったので、棟梁と呼ばれるようになっていた。おふくろさんも、ほっと一息ついた。

・・・とさ、めでたしめでたし。
師匠は、八五郎が士分に取り立てられた後を以下のように編集されています。
肉親愛に感動した殿は「愛い(うい)やつじゃ。士分に取り立ててつかわす」と言う。
感極まった八五郎、立ち上がった途端に足を滑らして倒れて、そのまま高鼾で寝てしまう。
大勢に担がれて、他の部屋に移され、一夜を明かす。
翌朝、目を覚ました八五郎、約束通りに刀を大小貰い受け、供を付けてもらって馬に乗って長屋に帰ってきた。
驚いた大家は母親に知らせに行った。
「八五郎が馬と一緒に戻ってきたぞ」
「やっぱり、吉原へ行ってたんだ」

[素人鰻(鰻屋)]と同じオチだあることにご不満で、オリジナルなオチにしています。
これには、”遊び好きの八五郎が「馬」を連れて戻ってきている”という仕込みと、「馬」の意味が分からないと。
・・・だから「長屋馬」なんですね。

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