キラキラネーム
「キラキラネーム」というのは、当て字が多く一見して正確に読むことはほぼ不可能に近い、一般常識では考えにくい名前のこと。
語源は不明ですが、多分に「嘲笑」の意味が込められています。
子どもの名前に見られる、暴走族のような当て字や漫画・アニメ・ゲームなど架空のキャラクターからとった当て字の名前のように、読みづらい名前や、常識的に考えがたい言葉を(戸籍上の)名前にすること、その名前です。
某週刊誌に、このキラキラネームが採り上げられていました。
曰く、「犬や猫でもバカにされかねない恥ずかしい名を、わが子につけて悦に入る親たち。当て字の"才能"には恐れ入るが、一瞬の思いつきの犠牲となり、一家一門の恥をさらしながら生きざるをえないわが子の哀れな運命を、少しは想像したことがあるだろうか。」
まぁ、そこまで言うかですが、確かにそれに近い思いにもなります。
差し障りがあるかもしれませんが、こんなキラキラがあるそうです。
空(すかい)、男(あだむ)、英雄(ひーろー)、世導(りーだー)、
七音(どれみ)、強音(ふぉるて)、希星(きらら)、絆星(きら)
来桜(らら)、月(あかり)、天響(てぃな)、緑輝(さふぁいあ)
火星(まあず)、葵絆(きずな)、姫星(きてぃ)、泡姫(ありえる)
美俺(びおれ)、姫凜(ぷりん)、恋恋愛(れんれこ)
祈愛(のあ)、今鹿(なうしか)、光宙(ぴかちゅう)、黄熊(ぷう)
・・・いやはや何とも・・・。
昔、わが子に「悪魔」という名前をつけた親が問題になりましたが、ある意味では、それ以上の"乱れ"を感じてしまいます。
まるで、落語のオチのようです。
落語のオチなら洒落になりますが、生身の人間の正式な名前となると洒落になりませんよ。
私が小学生の頃でしょうか、近所に女の子が生まれて、親は「くるみ」ちゃんと名づけようとしたそうですが、「この子が70~80歳になって、くるみちゃんはどうか」ということで、「○代」ちゃんという名前にしたという話を聞いたことがあります。
今では80歳の「くるみ」ちゃんも十分ありですが、当時は、「○子」「□美」「○枝(江・恵)」「△代」ちゃんなどというパターンが主流でしたから。
名前と言うのは、例えば、海外では宗教とか。
日本では、格言とか、自然とか、良い意味合いは勿論、普遍性のある価値観とか品格も意識して、多くの人が納得して敬意を表すことが出来るものをつけようと思うのは、オジサン発想なのでしょうか?
打算だとか、一時の熱情や好みでは、かえって陳腐なものになりかねませんから。
そう言えば、キラキラネームではありませんが、最近の町村合併で、歴史や風土を表わすような名前から、訳のわからない、関係者の妥協の産物のような地名も出ています。
これも、同じ雑誌の別項で語られていました。
「歴史や風土を背負い、土地の"履歴書"たる市町村名が、平成の大合併をへて次々と書き換えられてしまった。あたかも、ほかの誰かになりたがったかのようだが、逃亡を企てる指名手配じゃあるまいし・・・。」
これも、前半部分は、同感ですね。
カタカナやひらがなの名前、実現はしなかったものの、キラキラネームのような当て字のような名前も真剣に議論されたそうです。
一番安直なのは、既にある有名な地名に「東」「南」「西」「北」をつけた、駅名のようなパターン。
私の身近なところで違和感があったのは、山梨県で言えば「中央市」と「甲州市」ですね。
静岡県では何と言っても「伊豆の国市」ですよ。
中央って、どこの中央なんでしょう。
甲”州”、伊豆の"国"は、既にエリアの単位がついているのですから、馬から落馬名と同じだと思います。
いずれも、甲斐市、伊豆市という名前を先に取られてしまったので、苦し紛れにつけたのが見え見えです。
さらにこの雑誌では、「南アルプス市」も言われていました。
アルプスというのは海外の地名ですから。
実現はしなかったそうですが、青森県「あっぷる市」、愛知県「南セントレア市」、奈良県「聖徳太市」・・・。
ここまで来ると、本当に真面目にやってるのと訊きたくなります。
奈良県の地名なんて、落語「鹿政談」のオチみたいです。
「きらず("きらず[おから]"と"切らず")にやるぞ」
「まめ("豆"と"まめ[元気]")で帰れます」
そうか、キラキラネームも、新地名も、落語のネタになりますね。
翻って、我々の高座名も、基本的には洒落の世界で命名していますが、中には訳の分からないものもあります。
申し訳ありませんが、我が落研にもありますよ。
私の「金願亭乱志」は、初代がいらっしゃるのですが、単なる地口だけではなく、複数の意味や思いが込められています。
現役の人には、名乗る名前は自由ですが、卒業して社会人になった時でも、どこでも理解されて堂々と使える名前にしておいた方がいいよ、と言いたいですね。
※金願亭乱志の薀蓄
読みは、近眼で乱視ということですが、金を欲しがって心乱れる字面になっていて、実際にプロにある、「金原亭」と「談志」の地口にもなっているのです。