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2014年8月27日 (水)

師匠からメール

師匠からメールで、師匠が再編集した「大工調べ」の高座本が添付されていました。
  流三さんへ
     大工調べ5、最新です。
     三方成敗の形にしました、、、。添付します。
     いかがでしょう、、、。
     よろしく、、、。                 圓窓

早速、プリントアウトしました。
内容を拝見したいと思います。
この高座本の巻末に、「噺の考察集」ということで、こんな対談が載っています。
この新しいバージョンを編集する前までの師匠とのやり取りのサマリー的なものです。
☆既成の[大工調べ]についての対談
    圓窓 × 三流亭流三 2014・3・16

圓窓 この度、[大工調べ]の高座本を作成したんだが
   苦労したよ。
   そこで、古い既成の[大工調べ]について、意見、
   感想を聞こうと思うんだが…。

流三 私は、師匠から稽古をつけていただいて、大岡裁き
   の[三方一両損]と[
帯久]の二席を演らせていた
   だいていますが、唯一この既成の[大工調べ]だけ
   は演りたいと思わないのです。

圓窓 実はあたしもこの噺の整理、編集はしてきたが、
   一度も口演をしてないんだ。不条理が心に引っ掛
   かって、口も思いも重くなるんだよ。
Photo_2
流三 あたしも棟梁の政五郎の言動(了見)と大岡越前守
   の裁決が納得できないからです。

 東北大の落語の研究をしていたと思っていたら、
   法律の勉強もしていたんだって?(笑)

流三 そうなんですよ。
   [三方一両損]は機転の利いたお見事な裁き。
   [帯久]は表面上は悪を無罪に、善を有罪にしなが
   らも実質的には真反対の裁決で人情の通った、これ
   またお見事な裁きです。
   ところが、既成の[大工調べ]の大家は酷い対応や
   仕打ちを受けるべき人物でないはずなのに…。

圓窓 悪人扱いになっていよね。
流三 そうです。聞いていて極めて後味が悪いのです。
  「大岡様、そのお裁きはちょっと?」と思ってしまう
   のです。
   長屋の住人の与太郎は家賃を一両二分と八百文も
   滞納している。
   だから、大家は店賃の抵当として与太郎の道具箱を
   取り上げたことに、非はないはず。

圓窓 それに、与太郎もそれを不承不承ながら認めている
   からね。

流三 一応合意のもとと言えるでしょう。
圓窓 奉行が大家に「質株も持っていないのに、道具箱を
   
預かるとはなにごとだ」と怒りをぶつけている演者
   もいる。

流三 この質屋の株(鑑札)は、質や金融を業とする者に
   対して、盗品や禁制品の流通防止などの観点から、
   その許可証として交付し、厳しく統制しようという
   ものです。
   しかし、大家はそれを業としている訳ではないので
   そもそも株(鑑札)は不要だと思うのです。

圓窓 その上、道具箱を取り上げた期間の休業補償を
   大家に押し付けている。

流三 世紀の大誤審ですね。(笑)
圓窓 棟梁は与太郎の債務について、ちょっと軽く考え
   ていたかな?
Photo
流三 そのようですね。棟梁は滞っている家賃全額では
   ないが、ほとんど返したんだから道具箱を返して
   くれても良いだろうと思ってんですが、しかし、
   法的には全額の弁済を受けるまで、大家は道具箱
   を返さなくても良いということになっています。

圓窓 棟梁は江戸っ子の代表のように啖呵を切ってるね。
流三 その啖呵は、棟梁として大きな勘違いと傲慢さが
   手伝って、人として礼を欠いたものと言えます。
   これは江戸っ子だからと言って、許されるもの
   だとは思いません。

圓窓 多くの落語フアンは啖呵を名台詞として拍手喝采。
   名作落語と賞賛している。

流三 落語の再吟味をすべきでしょうね。
圓窓 そこで圓窓高座本[大工調べ]を作成して、喧嘩
   両成敗としたんだが…。

流三 そうすると、勧善懲悪の痛快さはなくなりますよ。
   どうしても。

圓窓 既成の後味の悪さより救われるでしょう、きっと。
流三 これからも創意工夫を重ねいい噺にしてください。         
              [大工調べ]考察集
 
とても楽しいです。

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