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2014年4月14日 (月)

千早振る

千早振る
短歌の「千早ぶる」というのは。
さまざまな不思議なことが起こっていたという神代の昔でさえも、こんなことは聞いたことがない。龍田川が(一面に紅葉が浮いて)真っ赤な紅色に、水をしぼり染めにしているとは。
・千早(ちはや)ぶる
次の「神」にかかる枕詞で、「いち=激い勢いで」「はや=敏捷に」「ぶる=ふるまう」という言葉を縮めたものです。
・神代(かみよ)もきかず
「神代(かみよ)」とは、「(太古の)神々の時代」という意味です。
不思議なことが当たり前に起こった「神々の時代でも聞いたことがない」という意味になります。
下の句に記すのは、それほど不思議な現象だということを言っています。
・竜田川(たつたがは)
竜田川は、紅葉の名所で、現在の奈良県生駒郡斑鳩町竜田にある竜田山のほとりを流れる川のことです。
・からくれなゐに
「鮮やかな紅色」という意味です。「から」は「韓の国」や「唐土(もろこし)」を意味する言葉で、「韓や唐土から渡ってきた素晴らしい品」を表す接頭語(頭につける語)でした。
当時の韓や唐土というと先進国で優れた品が日本に渡ってきていたので、こういう意味となったのです。
・水くくるとは
「くくる」は「括り染め」、つまり「絞り染め」にするという意味です。
「(竜田川が)川の水を括り染めにしてしまうとは」という意味で、紅葉が川一面を真っ赤にして流れていることを、竜 田川が川の水を絞り染めにしてしまった、と見立てます。
また竜田川を主語にして「擬人法」を使い、また「とは」は上の句の「神代も聞かず」につながるので、倒置法も使われています。

201010060020000一方、落語の「千早振る(ふる)」というのは。
「先生」の異名を持つ岩田の隠居が茶を飲んでいると、なじみの八五郎が訪れてくる。
娘に小倉百人一首の在原業平の歌の意味を聞かれて答えられなかったため、隠居のもとを訪ねてきたという。
隠居も実はこの「ちはやふる神代もきかず竜田川からくれなゐに水くくるとは」という歌の意味を知らなかったが、知らぬというは沽券にかかわると考え、即興で次のような解釈を披露する。
江戸時代、人気大関の「竜田川」が吉原へ遊びに行った際、「千早」という花魁に一目ぼれした。
ところが千早は力士が嫌いで、振られてしまう(「千早振る」)。
振られた竜田川は妹分の「神代」に言い寄るが、こちらも「姐さんが嫌なものは、わっちも嫌でありんす」ということをきかない(「神代も聞かず竜田川」)。
このことから、成績不振となった竜田川は力士を廃業、実家に戻って家業である豆腐屋を継いだ。
それから数年後、竜田川の店に一人の女乞食が訪れる。
「おからを分けてくれ」と言われ、喜んであげようとした竜田川だったが、なんとその乞食は零落した千早太夫の成れの果てだった。
激怒した竜田川はおからを放り出し、千早を思い切り突き飛ばした。千早は井戸のそばに倒れこみ、こうなったのも自分が悪いと井戸に飛び込み入水自殺を遂げた(「から紅(くれない)に水くぐる」)。
八五郎は「大関ともあろう者が、失恋したくらいで廃業しますか」、「いくらなんでも花魁が乞食にまで落ちぶれますか」などと、隠居の解説に首をひねり通しだが、隠居は何とか強引にハチ公を納得させた。
やれ安心と思った所にハチ公が、「千早振る、神代も聞かず竜田川、からくれないに水くぐる、まではわかりましたが、最後の『とは』は何です」と突っ込んだ。
とっさの機転でご隠居はこう答えた。
「千早は源氏名で、彼女の本名が『とは(とわ)』だった」
・・・・だから、「千早亭永久(ちはやてい とわ)」ってい名前は、とても素敵な高座名なんです。

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