木戸銭の値上げ
日本経済新聞に、寄席の木戸銭の記事が載っていました。
落語を中心とした演芸が手軽に楽しめる寄席。
この大衆娯楽の殿堂にも4月からの消費税率アップの影響が及びそうだ。
浅草演芸ホールが1994年12月以来、ほぼ20年ぶりとなる木戸銭の引き上げを決めたほか、末広亭も値上げの検討に入った。
客足に影響は出ないのか。
■一服してしまった落語ブーム
浅草寺から歩いて数分。
公園六区と呼ぶ歓楽街の中心にある浅草演芸ホールは、この日も大勢の客でにぎわっているように見えた。
いつも繁盛していますねと、チケットもぎりの男性に声をかけたが、返ってきたのは苦笑い。
運営会社、東洋興業の松倉由幸社長によると、2013年の正月ごろから少しずつではあるが客足が落ち続けているという。
「落語ブームと言われて久しいが、あまり実感できませんね。東京スカイツリーが完成したときは浅草にもたくさんの人が流れてきたけれど、それも今は一服した。庶民の町ですから、アベノミクスの恩恵にあずかれるのも、たぶん最後の最後でしょう」
そんな状況だから、「私にとっても初体験」(松倉社長)という木戸銭の引き上げはおそるおそるだ。
ゴールデンウイークのかき入れ時が過ぎる5月21日から、税込み2500円の大人料金を2800円に変えるが、客足にどんな影響が出るのか、想像するのが怖いという。
現行料金(円) | 引き上げ後 | |
---|---|---|
浅草演芸ホール | 大人 2500 | 300円アップ |
学生 2000 | 300円アップ | |
小人 1100 | 400円アップ | |
(5月21日より) | ||
鈴本演芸場 | 大人 2800 | 据え置き |
学生 2400 | 100円アップ | |
小人 1500 | 据え置き | |
シニア割引廃止 | ||
末広亭 | 大人 2800 | 200円アップ |
学生 2200 | 300円アップ | |
小人 1800 | 400円アップ | |
池袋演芸場 | 大人 2500 | |
学生 2000 | すべて据え置き | |
小人 1500 | ||
国立演芸場 | 大人 2000 | 100円アップ |
学生 1400 | 100円アップ | |
シニア1300 | 据え置き | |
横浜にぎわい座 | 3000 | 80円アップ |
天満天神繁昌亭(大阪市) | 大人 2500 | |
学生 1800 | すべて据え置き | |
小人 1500 |
実際、特別公演などで料金を一時的に3000円程度にしたときなど、窓口までやってきた夫婦客が「高い!」と言って引き返すことがある。
カップルで5000円札1枚程度が入るか、入らないかの境目になっているもようだ。
本当は値上げしたくないところだが、消費増税分を転嫁しなければ、演者への出演料の支払いがきつくなる。
長年、我慢を重ねてもらったアルバイト従業員の賃上げも、そろそろ避けられなくなってきた。
「値上げする分、常連さんへの割引サービスなどは充実させたい」(松倉社長)。スタンプラリーなどの導入が目下の検討課題だ。
新宿の末広亭も消費増税分の転嫁はやむを得ないとの立場。
4月から税込み2800円の大人料金を3000円にする方向で検討に入った。
寄席形式の落語・演芸公演をしている国立演芸場や横浜にぎわい座も税率アップ分相当の値上げを実施する。
■「若手にトリを」の親心
一方、上野の鈴本演芸場(東京・台東)は、学生や会員向けの優遇制度を縮小して、一般大人・税込み料金2800円の据え置きを堅持するという苦肉の策を打ち出す。
65歳以上なら400円安くなる「シニア割引」は廃止する方針で、一部常連の不評を買っているが、席亭の鈴木寧氏は「全体のお客様の負担を考えると3000円の大台に乗せるのは避けたい。かといって、消費増税分のコストをすべて自腹で賄うのは厳しい」と苦渋の選択への理解を求める。
割引チケットを何枚も買って65歳未満の仲間に配るといった不正が後を絶たないことも、シニア割引廃止の理由の一つだという。
また、若手落語家にチャンスを与えたいとの思いもある。
鈴本では、昼の公演は150~200人の入場客が見込めるが、夜の公演はトリ(最後に登場する公演の実質的な主役)によっては30人程度しか入らない場合もある。
値上げすると、さらに空席が増える可能性が高い。
安定した人気を誇るベテラン落語家をトリに据えれば客は増えるが、それでは後進が育たない。
「若い者にトリを取らせると目に見えて実力がつく。絶対にやめたくない」(鈴木氏)
消費増税分の自己負担を意味する「木戸銭の完全据え置き」を決めたのが池袋演芸場。理由を聞くと、担当者は「なにかと面倒くさいから」と一言。
宵越しの銭は持たねぇを地でいく、照れ隠しなのは明らかだ。
■芸人の腕と客の心意気が支え
きっぷの良さは江戸っ子の専売特許ではない。
2006年にできた上方落語唯一の寄席、天満天神繁昌亭も4月以降、木戸銭を据え置く。
恩田雅和支配人によると、上方落語協会の桂文枝会長が昨年末に早々と「値上げ凍結宣言」を出したという。
2015年に予定される消費税率10%への引き上げの際も値上げはしない方針。
「そのかわりに、たくさんのお客さんに足を運んでいただかないと困ります」(恩田支配人)
寄席で見たり聞いたりできるのは落語だけではない。
漫才、コント、マジック、紙切り、曲芸……。
10~20組の演者が次から次へと出てきて、いようと思えば半日以上、時間をつぶせる。
ただ、楽しめるかどうかは演者の腕次第。
値上げするなら、それに見合ったひとつ上の芸が見たい。
一方で、客には「面白くなさそう」「昔に比べてつまらなくなった」と愛想を尽かす前に、一度足を運んで、今の演者の実力を確かめてみるのはどうだろうか。
大須演芸場は今年2月、家賃滞納で名古屋地裁による建物明け渡しの強制執行を受け閉館した。
いつもはガラガラなのに最終日だけは超満員。
「いつもこれだけ客がくれば、つぶれなかったのに」と言った有名落語家が、かつていた。消費増税後の2000~3000円の木戸銭は、心持ち一つで、高額にもなり、安価にもなる。
昼夜入替なしの寄席ならば、お昼から夜まで楽しめる(疲れますが・・・)のは、落語好きなら安いと思います。
勿論、番組にもよります。
最近のホール落語会などは、3500円から4000円が相場という感じです。
落語ブーム直前の頃は、3000円から3500円の感覚でした。
朝日名人会が4000円を超え、志の輔さんの独演会などは5000円以上しますが、このあたりは、価値観の違いで、高い・安いということになるのでしょう。
寄席に関して言えば、定席では3000円を超えないというのが、とりあえずの庶民感覚のような気がします。
しかし、寄席とて営利事業ですから、大須のようになってはいけませんから、席亭でも様々な工夫や努力が必要になると思います。
個人的に言えば、いつ行っても座れる寄席がいいのですが・・・。
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