落語と川柳
長井好弘さんの最新刊。(白水社刊・2415円)
なぜ落語では川柳がよき脇役なのか。
昭和の名人志ん生や文楽らが集った「鹿連会」の模様から、噺のネタで使用される具体的な作品まで、読売新聞川柳選者がその魅力と役割に光を当てる。
「昭和の名人上手が作った名句迷句を探し出した後は、川柳散歩で気分転換。噺の中に生きる川柳を吟味したついでに、噺家の句会を覗いて見た。」(「あとがき」より)
噺家の高座では、まくらに俳句よりもむしろ、川柳が披瀝されることが多い。
なぜだろうか。
またそれはいつごろから始まったことなのだろうか。
本書は落語を楽しむうえで欠くことのできないそうした川柳の役割を、読売新聞「よみうり時事川柳」選者が長年にわたって築き上げた薀蓄をもとに書き下ろした力作である。
昭和五年、当時花柳界を題材にした「花柳吟」の第一人者として知られていた川柳家・坊野寿山が、親交のある四代目柳家小さん、五代目三遊亭圓生の二人へ盛んに川柳の句作を勧め、八代目桂文楽、古今亭甚語楼(のちに五代目志ん生)、蝶花楼馬楽(八代目林家正蔵から彦六)ら、十五人の錚々たるメンバーを集め、鹿連会なる川柳会を始めた。
華々しいスタートを切った鹿連会だが、結局、回数にして五、六回、都合二年ほどで自然消滅、だが戦後もしばらくたった昭和二十八年六月、みごとに復活する。
その模様はラジオで放送されたり、人形町末広で即席川柳会が開かれたりもした。
本書はまず、この伝説の鹿連会に連なった面々の川柳を紹介しながら、彼らの「くだらないことに熱中する」姿を描き、それが落語の重要な要素になっていることを説いていく。
鹿連会の流れを引き継ぐ鹿川会のルポや、演目での実用例なども豊富で、目の肥えた落語ファンなら持っていたくなる一冊だ。
・・・・へぇぇ、さすが長井さんですね。
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